経営コンサルタントと経営者、それぞれの意識のあり方についてお話しています。
■経営コンサルに依存しない、能動的な経営を!
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?
今回は経営コンサルタントと"失敗は自責、成功は他責"という話をしたいと思います。私は、医師ですが、数字にはとても強いと思います。というより数字が大好きです。もちろん、銀行員家系であるということも一因ですが、それ以上に素晴らしい本に出会ったおかげだと思っています。それは、この番組でも何度も紹介している和仁達也さんの『脱ドンブリ経営』です。この本のおかげで、4つの法人の月次決算におけるチェックポイントが理解でき、問題を把握し、対応できています。最近では、和仁さんの知識を応用して、年間売上 8000億円の製薬メーカーの経営会議で講演したり、コンサルタントとして仕事をしたりしているので、随分と活用しています。
そんな和仁さんが新刊を出しました。『年間報酬 3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書』です。一見医療とは関係なさそうな題名ですが、これが大いに関係あるのです。特に、「コンサルタントの4つのモデル」の区分け。プロジェクト型、アドバイス型、ワークショップ型、パートナー型に区分けされ、私自身がコンサルをする際にもとても参考になっています。
この区分けは、見方を変えるとコンサルだけでなく診療所の患者さんにも当てはめることができます。たとえば、風邪などの症状で訪れた患者を治療するのは「プロジェクト型」で、短期の関わりになります。混む時は混みますが季節によってはすごく空いていたり、休診の日は患者が別の病院に行ってしまったりするため関わりも薄くなりがちです。ですからプロジェクト型というのはコンサルの戦略としては得策ではありません。
当グループのように、外来診療から介護サービス、在宅医療、看取りまでしていると、パートナー型として長期に関わることになります。その結果簡単には転院されませんし、それこそ一族で患者さんになってくれます。だからこの本は、題名以上に、多くの職業で応用できる知識が詰まっているのです。ちなみに、本の中で、2か所私のことが記載されていますので、探してみてください。
ところで私は、経営を行うに当たって積極的に経営コンサルタントを使っています。戦略策定は経営者自身が行いますが、それぞれの戦術においてはコンサルタントを使うことで、時間を節約することができます。そんなとき、経営コンサルタントと接していて不思議に思うことがあります。コンサル後の報告書を作ってくれないことです。コンサル時の話し合いは多岐にわたります。情報を共有するためには報告書が欠かせません。報告書が作成されないと、認識にズレが生じ、依頼した目的と異なった指導が行われることもあります。
私自身がコンサルをする際には、必ず報告書を提出します。コンサル後に報告書を作成することは、それなりの情報処理能力が必要となります。もちろん時間もかかります。しかし、クライアントへの報告以上にコンサルタント自身の頭が整理されます。コンサルタントが報告書を作成しないということは、彼ら自身が情報整理する機会を失っているともいえます。
コンサルを受ける際に、何度も同じ質問をされたり、以前に決まったことと違う提案がされたりすると、寂しくなります。コンサルタント自身が「報告書を作成するだけの基礎学力が欠如しているでは?」と疑いたくなります。
もちろん紹介した和仁達也さんは別格です。コンサル終了後、数時間で報告書が届きます。さらに、次回の面談1週前には再度予習的に報告書が届きます。コンサルタントは仕入もなく、"手っ取り早く"稼げます。和仁さんの本を読んで、安易にコンサルを始める方もいらっしゃるかもしれません。しかし報告書提出という最低限の能力は備えてから取り組んでもらいたいものです。
一方、経営者と話をしていると、コンサル内容や費用に文句を言う人が多いことに気がつきます。内容は 「あのコンサルタントは報告書も提出しない」「費用だけ掛かったが成果を出なかった」などです。
自分がコンサルをやるようになって気が付いたことがあります。確かにコンサルタントとして報告書を提出することは最低限の義務ですが、成果をもっとも上げるために必要なことは、クライアント自身が報告書を提出してくることです。報告書を作成することは、インプットした情報をアウトプットすることです。人間の脳は、インプットしただけでは1週間もすればすべて忘却します。アウトプットすることで、知識が長期記憶化され、"知恵"に変わるのです。その作業をしないクライアントはいつまでも、コンサルタントへの依存から脱却することはできません。
私のクライアントでも報告書を提出してくる人は一人だけです。もちろん成果も出していますし、いずれ私のコンサルも不要になる予感がしています。振り返ると当グループではすべてのコンサルを受ける際に、自分達でまとめの報告書を作成していました。そのため、少々レベルが低いコンサルタントでも成果を出すことができたのです。成果が出ればそのコンサルタントとの契約は解除して、新しいコンサルタントとの契約をしてきました。つまりコンサルタントを使うのは、戦略に基づいた戦術でしかないのです。コンサル費用以上の成果が出せないのは経営者の能力が低いから。まさに"失敗は自責、成功は他責"なのです。
―経営コンサルタントも経営者も、受身ではなく能動的でなくてはならないのですね
そのとおりです。ちなみに僕のコンサルもまだ一人、二人、空きがありますのでよろしければご依頼ください。(了)