夫婦2人で肩を並べていく生き方はしなやかで素敵です。
■「誰に食わせてもらってるんだ!」は通用しない
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?
男性の「寿退職」という言葉が介護業界にあることをご存じでしょうか? 一般的に給料が低めの男性介護士・保育士が、結婚を機により高給の仕事に転職することです。介護事業は介護保険報酬や人員基準が国によって定められており、それに伴って職員に支払える給与も決まってきます。世間では介護職の給与水準の低さが問題視されていますが、低くしている原因は国にあるのです。これは企業努力で対応できる範囲を超えています。
30年前の私が高校を卒業するころは、介護職という職種自体がありませんでした。しかし今では20歳代の若い男性介護職が利用者さんのおむつ交換をはじめとする介護をしています。その姿を見ると本当に頭が下がる思いです。そのため男性の「寿退職」などという言葉を聞くと、経営者として大変申し訳なく思います。
―介護職と同じく、男性保育士も重要になってきているとか
その通りです。子どもたちからも人気で保育の現場でも注目されているようです。しかしこちらも賃金の低さが問題となっています。
そこで日本経済新聞に先日掲載されていた記事をご紹介したいと思います。
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「保育士をしているあなたが好き。私もずっと働くから何とかなるよ」。結婚を考えていた彼女(25)からの返事に神戸市の保育園で働くAさん(25歳)は肩の荷が下りた気がした。「給料が安くても結婚してくれる?」と尋ねたのだ。
一家の大黒柱として"企業戦士"だった父を見て育ち、「男は稼いで家族を養ってこそ一人前」と思っていた。念願の保育士になっても、やりがいとは裏腹に月収が手取り約17万円という給料に劣等感があった。そんな悩みを彼女が吹き飛ばしてくれた。今春、結婚式を挙げる。「僕らは肩を並べて生きていく」。大黒柱が2本並ぶ。
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とても素敵な話だと思いませんか? ところで私はいわゆるバブル世代なのですが、当時の流行語に「三高」がありました。「高学歴」「高収入」「高身長」の男性のことを称したものです。1980年代末のバブル景気全盛期、女性が結婚相手の条件としてこの「三高」を求めたのです。正直なところ、女性が自分のことは棚に上げて男性に要求するだけの姿は美しいとは思えませんでした。
―バブル崩壊後、高度成長期には主流だった専業主婦世帯数も減少傾向が続いています
1997年以降は共働き世帯が逆転しました。男性の非正規雇用も増え、今のような厳しい経済状況では男性1人で家族を支えることが難しくなってきています。もちろん今でも「男が家族を養う」という形態はありますが、夫婦二人で肩を並べていくカップルもしなやかで素敵だと思います。
ちなみにある生命保険会社が2010年に行った調査によると、女性が求める結婚条件の1位から3位は「価値観が合うこと」「金銭感覚が一致していること」「雇用形態が安定していること」で、三つの頭文字を取って「3K」と呼ばれているそうです。一方バブル時代の「高収入」「高学歴」「高身長」はそれぞれ9位、19位、20位になっています。
―確かに最近は男性の身長があまり話題になりませんね
私も身長が168センチとそれほど大きくはないので、バブル時代は結構傷つくこともありました。今ならもっとモテるかもしれません(笑)本人の努力ではどうにもならないことに価値観を見出すかつての風潮には不満もありました。そんなことは全く気に留めず私と付き合ってくれた妻には感謝です。
当ブレイングループの介護職も共働きで働くスタッフが沢山います。特に女性スタッフの多くが結婚・出産したのちも戻ってきてくれるのです。組織が大きくなってスタッフが働きやすい環境を整えられたことも要因の一つです。そのおかげで「くるみんマーク」に認定されました。
―「くるみんマーク」とは何でしょうか?
少子化対策や子育て支援などについて、一定の基準を満たした企業や法人に対して厚生労働省が認定するものです。
介護職の平均年収は400万円前後ですが、共働きであれば年収1000万円の専業主婦家庭より安定させることもできます。年収1000万円世帯は身の丈を超えた生活をしがちだと言われています。住宅ローン、私立校進学のための教育費、高級車などの贅沢消費。そこに突然リストラされれば自己破産する危険もあります。
対して年収400万円の共働き世帯を考えると、収入の合計は1000万円の世帯に負けるものの税金などの実質所得はあまり変わりません。年収に見合った質素な生活をするので貯金ができますし、どちらかが病気やリストラになってもリスクが分散されます。
これからの不確実な時代においては、共働きで双方が家事・子育てを分担することが必須になるかもしれません。「くるみんマーク」に認定された当グループもしなやかに生きるカップルを少しでも応援できればと考えています。(了)