ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第14回「あなたの経営状況を推理します」

2013年9月17日 22:30

家賃が分かると、経営状況が推理出来ます。


■シャーロック・ホームズも驚く? 名推理
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

私たち医師は患者さんを診察する前に「アナムネ」を取ります。これはドイツ語のAnamnese(アナムネ―ス:既往歴)の略語です。

アナムネは診察前の問診にあたり、その際は既往歴をはじめ患者さんの主訴・経過・家族の病歴・嗜好(飲酒・喫煙など)について質問します。小児科では予防接種歴、女性の場合は妊娠分娩歴が含まれます。すべての診察はアナムネに始まるといわれ、私たち医師が大変重視しているものです。

そのせいか私は診察を離れた経営の場や雑談時においても、相手がどんな状態なのかを会話しながら推理する癖がついてしまいました。

先日ある会社の営業マンと面談の約束をしたときのことです。私は事前に彼が勤める会社について調べておこうと思い、ホームページを見てみました。すると漠然とではありますが、そのページから「儲かっていない雰囲気」が出ているのが気になったのです。具体的には、

・経営者の顔が見えない
・何が一番の「売り」なのかわからない
・どんな顧客を対象にしているかが不明瞭
・ホームページが定期的に更新されていない

などの点がひっかかりました。

そこで面談当日、「あなたの会社はずいぶん良い場所にあるようですが、家賃はいくらぐらいですか」と質問してみました。すると彼はあっさり「年間3600万円ぐらいです」と答えてくれました。

さてここで「家賃15パーセントのルール」を思い出してください。どんな業種であろうとも、家賃は売り上げの15パーセントを超えてはいけないというルールです。つまり家賃さえわかれば、そこから売上額が推定できるというわけです。

―家賃が3600万円だとすると、少なくとも2億4千万円の売り上げが必要になりますね

その通りです。そこで「会社の年間売り上げは3億円ぐらいですか」と聞いてみました。さすがに彼も言葉を濁しながら「3億円は無理です」という返事。「では、2億5千万円ぐらい?」と聞き返すと「それを目標にしていますが、あと一歩です」とのこと。

この会話から推理するに、彼の会社の売り上げは損益分岐点の2億4千万円前後。しかもなかなか目標を達成できず赤字に陥っているようです。

後にその会社の法人登記簿謄本を取り寄せて詳しく調べてみたところ、やはり年間売り上げの倍近い債務超過額がありました。よってこの会社との取引は見送ることに。自分の会社を守るためには相手の商品だけでなく経営状況も知っておくことが大事です。

また経営者は公人(社会的な立場にある個人)のため、法人登記簿謄本に自宅住所が記載されることがあります。そこで私は大きな契約を交わすときなどに、相手の経営者の自宅に「抵当権」が付いているか調べるようにしています。

住宅ローン程度の抵当権は許容範囲内ですが、中には事業用資金を借り入れるために第2、第3の抵当権が自宅に設定されている人もいます。これは自己破産する可能性が高く、危険信号です。実際、私が調査したところ自己破産するのではと危惧していた人がその通りになったことも数回あります。

お断りしておきますが、今回お話したことは決して興味本位で行っているわけではありません。今は何が起きるかわからない時代。自分の会社を守るためには相手の内情にまで切り込んだうえでの経営判断が大事なのです。(了)