ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第110回「とっても地味で大事な種銭の作り方」

2013年1月22日 22:30

「収入-支出=プラス」にすることで、大きな種銭になっていきます。


■小さな種銭から大きなビジネスが生まれる
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

種銭(たねせん)についてお話しします。種銭という言葉を辞書で調べると

①銭を造るとき、鋳型の模型となる銭
②金を貯めるときのもとにする金銭

と書かれていますが、ビジネスの世界では「投資するにあたって元となるお金」のことを言います。そしてビジネスは種銭=資本金が多いほど成功の可能性が高くなります。

最近は資本金1円でも株式会社を設立できますが、実際のところ世間の信用を得ることは難しいでしょう。銀行からの借り入れも同様です。また介護事業のようにお金が入ってくるまで数カ月かかるビジネスは、資本金がゼロだと家賃や人件費を払うことができません。

一方資本金が多ければ赤字期間が長期にわたっても耐えられます。宣伝広告費にお金をかけたり、良い場所に店舗を構えたりすることも可能となり、それだけビジネスが成功する確率が高くなります。

―種銭はどのようにつくればいいのでしょうか? 

種銭をつくる工程はとても地味なせいか、その段階を飛び越えていきなりビジネスを始めてしまう人が多いようです。しかし十分な種銭がなければ、どんなにマーケティングを勉強しても成功する確率は下がってしまいます。

種銭をつくるには、まず支出を抑えること。そして最初はどんなに少なくてもいいので「収入―支出」をプラスにしましょう。それがゆくゆくは大きな種銭となります。
「収入-支出」がマイナスになることは論外ですが、いつもゼロになってしまう人は多いのではないでしょうか。日々生活していくだけならともかく、これではいつまでたっても種銭はつくれません。

不思議なことに月の収支が1000円でも残るようになれば、「来月はもっと増やそう」と意欲がわいてきます。すると1000円が5000円、1万円、5万円......と徐々に貯蓄額が大きくなっていきます。

―支出を抑えるより、収入を増やす方法を考えたほうが早いのでは?

最初から収入を増やそうとするとうまくいきません。なぜなら仕事で得る報酬が急に増えることはまずありませんし、副業を始めたとしても経費がかさんで思うほどお金が入ってこないことも多いからです。

始めは支出を減らすことに専念し、その後収入を増やすという順番を守りましょう。すると種銭が貯まる好循環が生まれます。

―種銭をつくるには粘り強さが必要ですね

少し利益が出るとすぐプライベートな趣味に使ってしまう経営者も多いのですが、これは単なる浪費です。事業は常に種銭を残して次の投資をし続けることが重要なのです。

ちなみに投資の対象は自分が手がける事業、不動産、金融商品などですが、種銭が少ないと借り入れを増やすことになります。この場合も投資というよりは投機に近くなってしまいます。

自分が保有している種銭の範囲で投資を行えばリスクが極めて小さくなるうえに、たとえすべてを失ってもマイナスにはなりません。

リスクが高い投機ではなく安全な投資を行うために、種銭が貯まるまでは「地道にコツコツ」が大事です。
―他にも気を付けるべきことがあれば教えてください

先物取引には要注意です。例えば通常の投資なら100万円投資して失敗してもゼロになるだけですが、先物取引はレバレッジが効いて500万円損することもあります。

お金のプロの銀行員でさえ、人生を棒に振ることがあるそうです。先物取引はよほどの人以外はやめたほうがいいと思います。

■目に見えない「何か」にいつも感謝しよう
―種銭のつくりかたはどこか人生に通じるようです

もし自分の人間性を高めたければ、毎日地道に切磋琢磨するしかありません。この点は種銭のつくりかたとよく似ています。

そして人間性を高める方法としては、先祖を大事にすることをおすすめします。

成功した経営者にその要因を聞くと、ほとんどの人は「運が良かった」と答えるそうです。もちろん彼らは相当な努力をしているのですが、最後は人間の英知を超えた「何か」のおかげだと感じているのでしょう。それがビジネスをうまく運んでくれるのだと思います。

もちろん私も実家に帰ると真っ先に仏壇へ向かって手を合わせますし、定期的にお墓参りをします。こう言うと経営者仲間に驚かれるのですが、ごく当たり前のことをしているだけです。

みなさんもどこかで「自分の両親から20代さかのぼると、先祖は104万8576人になる」という話を聞いたことはありませんか? もしそのうちの一人でも若くして亡くなっていたら、自分は存在していません。

そう考えると「祖先を大事にしよう」という気持ちが自然とわいてくるはず。それが自分の人間性を高める第一歩となるのです。(了)