ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第63回「本の紹介:鹿島宏著『業界のセオリー』」

2012年2月21日 20:30

ビジネス界に脈脈と伝わる先人の知恵が詰まった一冊です。



人間の本質を突いたセオリー
―今回はどんな本を紹介していただけるのでしょうか

各業界に脈々と伝わる「先人の知恵=セオリー」を記した鹿島宏さんの『業界のセオリー』(徳間書店)を紹介したいと思います。本書には介護業界に生かせるものがたくさんあるのでぜひ参考にしてください。

―どんなことが書かれているのでしょうか

まず百貨店業界のセオリー「提案は三つ出せ」です。例えば正月の福袋などでも価格を「松」「竹」「梅」の三つに分けて提案していることがよくあります。

介護業界もケアマネージャーがご家族にケアプランを提案しますが、提案数が多すぎるとご家族は困惑してしまうでしょう。そこで「三つのプランから一つ選んでいただけますか」と提示すればわかりやすくなります。選択肢は「三つ」がちょうどいいのです。

―製造業には「汚い工場から名品は生まれない」というセオリーがあるそうですね

介護業界にもよく当てはまると思います。当グループでも利益を出している部門は現場の「整理・整頓・清掃・清潔・節約・精密」の6Sが行き届いています。

一方「売り上げが上がらない」「利益が出ない」「スタッフの入れ替わりが激しい」といった問題が発生するところは現場が汚れていることが多いようです。

―なぜ「整理・整頓・清掃・清潔・節約・精密」の6Sが売り上げに関係するのでしょうか?

6Sによって「気付き」が得られるからだと思います。そもそも「掃除はいいかげんだが仕事はきちんとしている」ことなどあり得ません。掃除が行き届いていれば必然的に仕事の質が高くなり、さらに売り上げにつながるのです。

―「段取り八分、仕事二分」はどの業界のセオリーですか?

これは大工さんのセオリーです。介護業界もお客様をお迎えしたり、ご自宅に訪問したりする前の段取りや準備がとても重要です。

「不器用な職人ほど大成する」というセオリーもあります。新人の頃は評価が低くても、仕事に対して真面目に取り組めば大成するという意味です。介護業界もこの通りだと思います。

―「職人は人に教えて二度習う」も素晴らしい言葉ですね

私も2年目のスタッフが新しく入ってきた後輩に指導することで急激にレベルアップした姿を何度も見ています。当グループが毎年新人を採用する方針を貫いているのも、この言葉と同じ目的があるからです。

他業界の知恵を取り入れよう
―外食業界のセオリーにも介護業界に通じるものがあるとか

「スタッフには指示でなく相談する」です。人は一方的な指示には反発しますが、「どうすればいいと思う?」と相談されると積極的に解決策を考えてくれます。ディズニーランドではアルバイトスタッフも生き生きと仕事をしていると言われるのはまさにこれです。介護業界も現場で働いているスタッフとの相談によって成り立っています。

―人材業界の「適職は自分ではわからない」というセオリーはどういう意味なのでしょうか?

第三者が自分でも気付いていない能力を引き出してくれることはよくあります。
例えば上司が「君にはこういう仕事が合っていると思う」と言ったら、それは自分の隠れた能力を発見してくれたということ。そのときは喜んで挑戦することが大事です。

実際、他業界から介護業界に参入して成功している人も少なくありません。私も他業界の人と接して「この人は介護業界に向いている」と思うことが多々あります。笑顔であいさつができ、「この人と一緒にいると楽しい」と思わせる人は介護業界でも十分やっていけるはずです。

―広告業界からは「発想はポジティブに、詰めはネガティブに」が挙げられています

平成24年4月から介護保険に厳しい改定があると予想されています。私たちもそれにめげることなくポジティブな発想をし、詳細はネガティブに詰めていくことが大事ではないでしょうか。これは日々の事業運営そのものだと思います。

―その他にも介護業界に役立つセオリーはありますか?

最後は経営者のセオリー「鳥の目・虫の目・魚の目」です。「鳥の目」は俯瞰して全体を見ること。「虫の目」は現場感覚を持ち、さらに複眼的に見ること。「魚の目」は潮の流れから未来を予想することです。

介護業界においても「鳥の目・虫の目」が大事であることはもちろんですが、今後は介護保険の流れを見極め、常に変革していく「魚の目」がさらに必要となってくるでしょう。

以上、本書は多くの気付きが得られる良書です。みなさんもぜひ一度手に取ってみてください。(了)