ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第61回「介護事業経営の常識1【賃貸】立派な事務所は持たない、土地は買わない」

2012年2月 7日 20:30

経営の常識を学ぶことは、経営判断のミスを減らすことにつながります。



土地や建物の購入はおすすめしません!
―今回はどんなテーマでお話しいただけるのでしょうか?

経営者はどのような判断を下すべきか迷うことが多々あります。しかし介護事業経営にはいくつかの常識があり、それを知っておくとむやみに悩むことがなくなることをお伝えしたいと思います。

例えば新規に介護事業を開業するとき、施設や事務所が必要になります。ここでのポイントは「土地や建物を購入しないこと」。なるべく賃貸を選びましょう。

たとえデイサービスなどの入所系サービスを手掛ける場合でも、建物は地主さんに建ててもらい、それを借りるのです。

―購入はリスクが大きいということですか?

以前は土地を購入し、それを担保に次々と借金をしてビジネスを拡大する手法が主流でした。

しかし最近はできるだけ資本を投下せずに利益を上げる方向に変わってきています。介護事業も賃貸が向いている業種です。

―賃貸料はどれくらいが適正でしょうか

ただ安ければいいというわけではなく、明確な基準を持つことです。介護事業であれば1カ月の総売り上げの15パーセントを上限としましょう。

―具体的に説明していただけますか?

例えば30人定員のデイサービスの場合、1カ月の売り上げがおよそ500万円。その15パーセントは75万円です。

この額を超えない範囲で土地と建物を借りれば経営に余裕が出ます。地主さんと交渉するときは、この基準を頭に入れて臨むといいでしょう。

もし75万円以下にならないときは、無理して契約することはありません。ちなみに15パーセントという数字は飲食店やコンビニエンスストアにも当てはまります。

これは多くの先人たちが経験から編み出した数字であり、私もこの基準が適正だと実感しています。

立派な事務所は、介護事業に必要なし!
―この基準を知っていれば、高額な賃貸料が経営を圧迫することも避けられますね

新しく事業を始めるときに立派な事務所を借りたがる人は多いです。

もちろんお客様をお迎えする事業であれば立派な事務所が必要でしょう。しかし介護事業は違います。事業が軌道に乗って順調に利益が出るまでは辛抱するべきだと思います。

月額100万円で事務所を借りている人の話を聞いたことがありますが、どんなに立派な事務所を構えていても、介護事業の場合は1円の利益にもならないことを忘れてはいけません。

―経営者はこの点をよく理解しておく必要がありそうです

利益率にもよりますが、100万円の利益を得るには1000万円以上の売り上げが必要です。

何の利益も生み出さない事務所の賃貸料のために、介護スタッフが苦労して生み出した利益を無駄にしてはいけません。

介護事業を手掛けるなら、事務所や社長室の家賃、余分な人件費といった間接経費は極力抑える必要があります。

―建物を借りられない場合はどうすればいいでしょうか?

事業展開したいエリアで借りられる物件がなかったり、建物を建設してくれる地主さんがいなかったりした場合は自分たちで用意することになります。

その場合も土地は購入するべきではありません。今後は土地の価格が上昇する可能性が低いうえに、人口も減少しているからです。

また建物を建設する際の費用は減価償却で一部経費にできますが、土地の購入には適用されないので注意してください。

―最後に、今回のまとめをお願いします

【介護事業の常識1】
・建物はできるだけ借りる
・賃貸料は1カ月の総売り上げの15パーセントが上限
・立派な事務所や社長室を持たない
・土地は買わない

以上の知識があると、格段に経営判断ミスが少なくなると思います。(了)