ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第59回「本の紹介『営業マンは断る事を覚えなさい』」

2012年1月24日 20:30

今回ご紹介するのは経営コンサルタントとして著名な石原明氏の著書。「マーケティング」という言葉自体の意味が理解できない方には特におすすめです。



医療介護業界にこそマーケティングが必要!
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

経営コンサルタント石原明さんの著書『営業マンは断ることを覚えなさい』(三笠書房)をおすすめしたいと思います。

石原さんは多くの経営者から信頼を寄せられており、私も勉強会にお招きしたことがあります。

―かなりユニークなタイトルがつけられていますね

医療介護業界には「営業マン」「断る」という言葉に拒否反応を示す人が多いかもしれません(笑)しかし本書は医療介護業界にも十分通用する内容です。

―どのような内容なのでしょうか?

本書は特にマーケティングの意味がよくわからない人におすすめです。例えば一般のビジネスパーソンはマーケティングという言葉を頻繁に使いますが、医療介護業界ではめったに出てきません。

つまり私たちは「医療介護業界は他の業界と違う。だからマーケティングなどは必要ない」と考えているのです。しかし本書を読むと、たとえ業種が違ってもマーケティングの重要性は変わらないことがわかります。

なぜならプロダクション(提供する商品やサービス)が違っても、それをどうやってお客様に買っていただくかを考える必要があることは同じだからです。

―本書ではマーケティングをどのように説明しているのでしょうか

石原さんはマーケティングを四つのステップに分けています。

1集客......見込み客の発見。自分が提供するサービスに関心がある人を集める
2見込み客のフォロー......情報を提供し、見込み客を教育する
3販売......実際のセールスや契約
4顧客化......さらにお客様をフォローし、リピート販売・新商品購入・紹介につなげる

すぐに商品やサービスを販売するのではなく、その前に「1集客」と「2見込み客のフォロー」を入れることがポイントです。

―医療介護業界では、どのような営業をしているのでしょうか

残念ながら、営業の知識や経験がない人を営業マンにしたり、思うような成果が出ずに悩んでいたりするところは多いようです。

石原さんは、マーケティングとは営業マンと法人が一体になって行うものだと述べています。「1集客」「2見込み客のフォロー」「4顧客化」は主に法人が行い、「3販売」は営業マンの担当とすれば、成果が出やすくなります。

営業マンも「会社が自分を応援してくれる」と励みになりますし、さらに意欲がわくことでしょう。

提供するサービスの質がいいことは大前提!
―その他にも、営業で大切なことは紹介されていますか

お客様は売れている営業マンから買いたいと思っています。例えばいつも行列が絶えない人気ラーメン店と、ガラガラのラーメン店ではどちらに入りたいと思うでしょうか?

もちろんラーメン店と医療介護業界は同じではありませんが、「人気がある病院や介護施設に行きたい」というお客様の気持ちは変わりません。

また、営業マンがあまりにも低姿勢だと逆効果です。誠実で毅然とした態度であればお客様から信頼され、さらに交渉の主導権を握ることができます。

―まずは自分が提供するサービスに自信がなければいけませんね

そのうえで「値段は下げるよりも上げる」ことが大切です。いたずらに値段を下げると、お客様が不信感を抱いたり、不毛な価格競争に陥ったりしてしまいます。特に介護事業では注意すべきでしょう。

質のいいサービスを提供しているのであれば、値上げしてもお客様の数は増えます。

例えば当グループが展開するデイサービスは若干料金が高くなっていますが、他では行っていないリハビリやおいしい食事などが好評で、多くのお客様に利用していただいています。

タイトルだけ見ると本書は医療介護業界とは無関係だと思うかもしれませんが、一度じっくり読んでみることをおすすめします。(了)