ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第7回「マーケティング:ケアマネージャーへのアプローチ」

2011年1月25日 20:30
ケアマネージャーへの"お願い営業"は逆効果!?

しつこい営業は逆効果!

―今回は介護事業所の「見込み客」であるケアマネージャーにどうアプローチしたらよいかをお話しいただけますか


実は私もケアマネージャーの資格を持っています。2000年4月にスタートした介護保険制度に合わせてケアマネージャーの資格をとった医師も多かったですね。ところが実際にケアマネージャーとして活動している人はほとんどいません。


その点私は1年ほどケアマネージャーとして働いた経験があります。ケアマネージャーを別に雇えなかった一時期だけ医師と兼任していたのですが、おかげでケアマネージャーの仕事に対する理解を深めることができました。


―ケアマネージャーを兼任していた当時、どんなことを感じましたか


ケアマネージャーのもとには、介護事業所の営業担当者がたくさん訪れます。

「ぜひご利用者様をご紹介ください」「このサービスを使ってください」としきりにお願いされるのですが、はっきり言うと結構しつこいんです(笑)


ケアマネージャーは介護サービスの調整をはじめ、利用者のお宅にうかがったり、書類を作成したりと多忙です。


得意先に何度も顔を出すのは営業の基本ではありますが、介護業界ではどれだけ顔を出されても利用者に適したサービスでなければ使えません。ですからあまりしつこくすると嫌われてしまうおそれもあるのです。


―いわゆる「お願い営業」は逆効果なのですね。では、どのようなアプローチをするといいのでしょうか


「この事業所が提供しているサービス内容を詳しく知りたい」とケアマネージャーに関心を持ってもらうことが大事です。例えば当事業所は認知症を改善するための「脳リハビリ」や、体が弱っている人向けの「パワーリハビリ」を行っていますが、こうした情報を発信するとケアマネージャーが興味を持ってくれます。そこで事業所の情報発信を兼ねた勉強会を開くことをおすすめします。


過剰なアピールは禁物!

―事業所は「ケアマネージャーが必要としている情報は何か」をおさえておく必要がありますね


彼らは「そのサービスを受けるとどんな効果があるのか、どんな人に向いているのか」が知りたいので、事業所はそれに応えるような情報を積極的に発信しましょう。


ちなみに当事業所は2カ月ごとに勉強会を行っており、毎回50人程度のケアマネージャーが参加してくれます。注意すべきは、ケアマネージャーに役立つ情報提供をメインにし、その間に事業所のアピールをすること。事業所の宣伝ばかりすると、かえって敬遠されてしまうので気をつけてください。


―ケアマネージャーはあくまでも中立的な立場だと理解する必要がありそうです


むしろ過剰なアピールをしないほうがケアマネージャーの信頼を得られます。

当事業所の勉強会をケアマネージャー研修の一環として組み込んでくださったところがあるのですが、彼らから見ても偏りのない勉強会を提供できていたのだと思うと、とてもうれしかったです。


―アピールをひかえると利用者増加に結びつかないように思えますが、成果は出るのですね


自分たちのサービスを全面に打ち出してしまうと、あまりいい効果は得られません。まずはケアマネージャーが必要としている情報を提供すること。それが信頼につながるのです。


―さっそく勉強会を開こうと考えている人に向けてヒントをいただけますか


勉強会を開くには入念な準備が必要です。経営者の方はいきなり「やれ!」とスタッフに命じるのではなく(笑)まずは事業所内で実行委員会をつくり、テーマは何にするか、会場をどこにするか、講演者は誰かなどを話し合ってください。最初にしくみをつくって誰にも過度の負担をかけないようにすれば、うまくいくと思います。しくみづくりの具体的な説明は、回を改めてお話ししましょう。(了)