ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第6回「マーケティング:見込み客=ケアマネージャー?」

2011年1月18日 20:30
介護事業では、不特定多数のお客様でなく、ケアマネージャーへのアプローチが重要です。

顧客は自分でつくるもの

―介護事業向けマーケティングを考えるにあたって、長谷川さんが感銘を受けた言葉があるとうかがいました


「顧客は降ってわくものではない。つくられるのだ」という言葉です。これは顧客がやってくるのをじっと待つのではなく、自分たちで顧客を創造していく努力をする必要がある、という意味です。


-「顧客を創造する」と聞くと、大変難しいことのように思えるのですが


確かに一般的なビジネスのマーケティングは、不特定多数の中から見込み客を探し出さなければいけません。当然ながらかなりの労力やテクニックが求められます。ところが介護事業の場合、比較的容易に見込み客を集めることができるのです。


―それはなぜでしょうか?


介護業界においては、見込み客=ケアマネージャーと言えるからです。例えば10万人もの人が暮らす大都市でも、ケアマネージャーの数はだいたい100人前後。つまり介護事業のマーケティング対象は10万人ではなく、100人前後のケアマネージャーに絞られるということです。


―介護施設やサービスを探している一般の人=見込み客ではないのですか


実は「どの介護事業所がよいのか」を判断するのはケアマネージャーの仕事なのです。


ケアマネージャーが利用者の状況を見て介護サービスをプランニングし、適切な事業所を紹介するというしくみなので、介護事業者と利用者が直接やりとりすることはほとんどありません。


つまり利用者を増やしたければ、ケアマネージャーに自分たちを選んでもらうことが大事なのです。


―ケアマネージャーの判断は事業所に大きな影響を与えそうですね


介護を必要としている人から相談を受けたとき、ケアマネージャーは独自の情報をもとに作成したリストを参照します。


そのときに「以前この事業所を紹介したけれどもあまり評判がよくない。今後はこの施設をリストから外そう」と判断されることもありますし、「この事業所を紹介したら利用者とその家族がとてもよろこんでくれた。今回もこちらを紹介しよう」という展開になる場合もあります。ケアマネージャーは事業所にとって怖い存在でもあるわけです。


積極的な情報発信を!

-ケアマネージャーのリストに「自信をもってすすめられる事業所」として名を連ねることが大事ですね


私のところでもケアマネージャーから紹介されたという利用者は多いです。患者さんにぴったりの事業所を紹介するという点においては、ドクター以上の手腕があるのではないでしょうか。


―まさにケアマネージャーの腕の見せどころと言えそうです


ケアマネージャーには「サービスの手配師」という側面があります。彼らはどんな事業所を紹介すれば利用者がよろこんでくれるかを第一に考えていますので、私たちはその候補に上がることを目指さなければいけないと思います。


―介護業界で見込み客=ケアマネージャーという考え方は一般的なのですか?


ケアマネージャーから利用者を紹介してもらっているという認識はあると思いますが、自分たちからケアマネージャーに働きかけることは少ないと思います。


ケアマネージャーはいつも事業所の情報を必要としているのですから、「当事業所のデイサービスを使うとこんなメリットがあります」などと告知するだけでもよろこんでもらえるはずです。ぜひ積極的になってほしいと思います。


―ケアマネージャーに頼るだけでなく、自分たちから情報発信することですね


例えばケアマネージャーから「今回初めてそちらを利用した方が、大変喜んでいましたよ」と伝えてくれたとします。そこで「ありがとうございます。またよろしくお願いします」で終らせてしまってはいけません。


事業所からも「みなさんと一緒で楽しそうにしていらっしゃいました」「最初はちょっと緊張されていたようです」といった具合に情報を提供してみましょう。


するとケアマネージャーは利用者の状況を詳しく知ることができるので、またよろこんでくれます。このように介護事業においては、ケアマネージャーとのつながりを深めていくことが効果的なマーケティングになるのです。(了)