ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第5回「マーケティングとは?」

2011年1月11日 20:30
お客様にサービスのドア口まで足を運んでいただき、契約・利用いただく機能や仕組み、「マーケティング」は、介護事業にも必須です。

マーケティング=お金儲け?

―この番組を通して「介護事業におけるマーケティングの必要性」を伝えている長谷川さんですが、かつてはマーケティングに対して先入観を抱いていたそうですね


そもそも「マーケティング」という言葉は、介護業界で使ってはいけないものだと思っていました。それが一体何であるかを理解する以前に、「医療介護という神聖な場に、お金儲けの手法を持ち込むなんてとんでもない」という先入観があったのです。これは私だけでなく、ほかのスタッフも同様でした。「マーケティングは私たちの業界には馴染まないうえに、そんなものは必要ない」。今でもそう考える人は多いのではないかと思います。


―確かに「マーケティングはあの手この手で商品を売りつけることだ」と思っている人は多そうですね。一方で、単なる市場調査という意味で使われることもあるように感じます。マーケティングの定義には難しいですね


私も自分なりの言葉で「マーケティング」を定義できるようになるまで時間がかかりました。しかし介護施設も一つの事業体であり、健全な経営をしていく必要があります。そのためには私たちが一体何をしているのかをみなさんに理解してもらわなければいけません。


そこで現在は「マーケティングは利用者に私たちが提供するサービスの入り口まで足を運んでいただくためのしくみである」と定義しています。


―この定義にいたったきっかけを教えてください


介護事業の営業は「とにかく利用者を増やしなさい」と言うばかりで、何の戦略もないことが一般的でした。具体的なビジョンや指示なしに営業させても、現場の人間は苦労するだけです。私はこんな状態をどうにかしたいと思いました。そこで利用者に私たちのサービスを理解してもらい、さらに契約へと結びつけるにはどうすればいいかを考えていくうちに、先ほど述べたマーケティングの定義や利用者獲得のしくみができたのです。


―長谷川さんのような発想をする人は、介護業界ではまだ少ないのでしょうか


介護に携わる人たちは、自分をアピールしたり、何かを打ち出したりすることに慣れていません。


基本的に受け身で、「毎日きちんとしたサービスを提供していれば、いつか必ず誰かが来てくれる」と考えるのです。しかしそれでは利用者を獲得することはできません。今のところ介護業界は右肩上がりの「成長期」なので、受け身の姿勢でいられる余裕があるかもしれませんが、近い将来「成熟期」に移行することはあきらかです。そのため今のうちにマーケティングのしくみをつくっておく必要があると思います。


受け身の姿勢を脱却しよう

―介護業界の先を読んで、早い段階から準備しておいたほうがいいということですね


そうです。それに介護現場は利用者がいるからこそ改善され、スタッフも成長できるのです。こう考えると利用者を確保することの大切さがわかるのではないでしょうか。


―マーケティングのしくみを確立するために重要なポイントがあれば教えてください


「介護事業にもマーケティングは必要である」とスタッフに理解してもらうことです。例えばケアマネージャー向けの勉強会や講演会を主催する場合、なぜこのような催しをするのかをよく説明してください。そうでなければマーケティングに対していい印象を持っていなかったり、誤解していたりするスタッフが離れてしまうおそれがあります。


また「新しい事業を提案するときはマーケティングプランも一緒に考えること」を日頃からスタッフに伝えておくことも大事です。


―経営者とスタッフの間で、マーケティングに対する認識を一致させておくことが一番大事なのですね


どんなにすばらしいマーケティングでも、スタッフの協力なしには成り立ちません。事業所で働く全員の認識が一致すれば、ケアマネージャーや利用者への対応のしかたも変わってくるはずです。ちなみにマーケティングは特別なイベントを開催するだけでなく、毎日行っている朝礼やあいさつなどを改善することも含まれます。


―長谷川さんは「マーケティングという言葉にどうしても違和感があるスタッフには、無理に使う必要はない」ともお考えだそうですね


「マーケティング」は絶対的な呼称ではありません。別の言葉に言い換えてもいいですし、あえて「マーケティング」という言葉を伏せておく方法もあります。どんな呼称であれ、利用者獲得につながるしくみを確立し、スタッフがそれに基づいて行動できればいいのです。経営者はこの点を忘れずにいてほしいと思います。(了)