ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第4回「介護事業がコンサルティングを受ける必要性③」

2011年1月 4日 20:30

介護事業では、そのサービス自体に執着する傾向があります。しかし充実したサービスを誰も知らないことよくあります。

アピールなんてとんでもない?

―前回はコンサルティングフィーやコンサルタントとの付き合い方についてのお話でしたが、今回はどんなテーマでしょうか? 


介護事業者特有の傾向についてお話したいと思います。介護事業は医者、看護士、介護職などいわゆる専門職と呼ばれる人たちによって運営されています。彼らは日々「自分たちの提供するサービスをよりよいものにしよう。もっと充実させていこう」と一生懸命なのですが、自分たちや事業所の良さは「声高にアピールするものではない」と考えているふしがあります。


ところがビジネスは「人に知られていなければ存在しないことと同じ」。どんなにサービスを充実させても、経営が行き詰まってしまうこともあるのです。


―介護事業所のみなさんが一生懸命なだけに、難しいですね


むしろ「誰に知られることがなくてもいいサービスを提供している」ことに満足を覚えている人もいます。そのためマーケティング自体を毛嫌いしてしまうのです。


一方で「売り上げが伸びないから営業に行ってこい」などと営業職の経験もない人に言いつけて、貴重な時間と労力を浪費している事業所も多く見受けられます。


―これからの介護事業所は、こうした思い込みから脱却する必要がありそうです


介護事業所を運営していくには、経営者や幹部がきちんとしたしくみをつくることが大事です。すると最小限の労力で高い効果を生み出すことができるようになります。


―長谷川さんがコンサルタントとしてクライアントに提言したしくみにはどんなものがありますか


マーケティングは「自分たちが提供するサービスの入り口まで顧客に来てもらうためにすること」です。難しく思えるかもしれませんが、介護事業のマーケティングは他の事業に比べて簡単な部分もあります。なぜならマーケティングの対象が事業所と利用者の間に存在するケアマネージャーに絞られるため、不特定多数に向けて宣伝する必要がないのです。


ケアマネージャーを集めて事業所の特徴や利点を説明し、その結果ファンになってもらえれば、自分から営業しなくても利用者を紹介してもらえるしくみができあがります。


―どのようにしてケアマネージャーを招集すればよいでしょうか?


有名な先生を招いて講演をしてもらったり、テーマを決めて勉強会を開催したりすることが挙げられます。情報誌や新聞を定期的に発行してもいいでしょう。これらはしくみさえつくればどの事業所でもできることなのでおすすめです。


オープン初日に採算ライン越え

―ケアマネージャーに事業所をアピールするためにしたことで、効果がもっとも高かったものがあれば教えてください


介護のプロを招いた勉強会です。これは新しいデイサービスを開始するにあたって開催したのですが、本当にすばらしい効果をもたらしてくれました。


一般的にデイサービスは1年ぐらいで採算ラインを超えれば成功とされますが、私たちは定員30名のデイサービスのオープン初日に25名の利用者を獲得することができました。ケアマネージャーを対象とした事前のアピールが功を奏し、わずか1日で目標を超えたのです。「適切なマーケティングを行えば早い段階で損益分岐点に到達できる」という確信を深めたできごとでした。ちなみに七つのデイサービスを運営しているのですが、すべて短い期間で損益分岐点に到達できたことも付け加えておきます。


―最後にリスナーに向けてメッセージをいただけますでしょうか


介護事業にも適正な投資が必要です。投資というとあまりピンと来ないかもしれませんが、「時間を買う」という発想を持ってコンサルティングを受けることは有意義だと思います。もちろんこれは手を抜くことを意味するのではなく、誠実にサービスを提供する姿勢に「コンサルティング」「マーケティング」「アカウンティング」の概念をうまく融合させると、永続的な成長が可能になるということです。


介護業界が衰退期に向かう前に体制を整えておけば、新たなチャンスにつながります。これは数々のコンサルティングを受けてきた私の経験からも言えることですので、事業所の規模に合った適正な投資をしてみてはいかがでしょうか。


介護事業は世の中の役に立つうえに、多くのスタッフも幸せにできるすばらしい仕事です。介護に携わるみなさんが明るい未来を描き、発展していくことを願ってやみません。(了)