ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

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認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第74回「寄付をする前に寄付先を吟味しよう」

2014年11月18日 22:30

寄付金の行き先に関心を持たない限りは、無難な組織に寄付されるだけになってしまいます。


■寄付金の使い道に関心を持っていますか?

―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

今年も24時間テレビが放送されました。皆さんも、この番組やそれ以外での呼びかけに応えて、寄付をする機会は多いと思います。しかし、寄付をする際に「お金がどのように使われているか」を気にすることはあるでしょうか? たとえば、多くの方が「寄付」と聞いてイメージする社会福祉法人については以下のような報道もされています。

"都道府県と政令市、中核市109自治体(13年度末)を対象に、調査した結果、09~13年度に、役員が運営費を私的流用したり、理事会の承認を得ずに高額報酬を受け取ったりするなどの「公私混同」が65法人で確認された。うち13年度末までに、29法人は同法に基づく改善命令を受けた。寄付金約1億7000万円が使途不明になり、理事長が一部を私的に流用していた埼玉県内の社福は、改善命令に応じず、12年7月に解散命令を受けている。65法人のうち約7割が、「理事長が年間2000万円の報酬を理事会の承認を得ずに受け取っていた」(浜松市)など、金銭に絡む不正だった。横浜市の社福の元理事長は06~08年頃、最大で月225万円を受け取り、勤務実態のない妻や長男にも月20万~100万円の給料が支払われていた。元理事長の流用総額は約2億2500万円。同市は社福への通知文書で、「理事会が機能しておらず、不適切な支出を抑止できなかった」と指摘した。"

寄付したお金の一部がこんな使い方をされたらどう思いますか? 世間が募金の行き先に関心を持たない限りは、社会福祉法人といった無難な組織にお金を渡して終わりとするでしょう。逆に選ばれた組織が、「我々は、集まったお金を最大限有効活用していただける団体として、Aという機関とBという機関を選びました。その理由は.......」と説明することが当たり前の社会にならない限り、集まったお金は適当にバラまかれ続けます。

ところで皆さん。「社会福祉法人」「一般社団法人」「NPO 法人」、それぞれの特徴や違いが分かりますか? よく分からなくても、どれも公的な印象を受けるため、「このような法人なら寄付をしても安心」と思いがちです。それぞれの特徴を簡単にご説明します。

「社会福祉法人」は、高齢者や障害者らを受け入れる福祉施設の経営や保育所の運営などを目的とし、全国に1万9810か所あります。法人税が非課税で、福祉施設の整備には国・地方から補助を受けることができます。手厚い保護を受けることができる反面、作るときのハードルも高く、理事による監督のもと公益性を保った運営をしなければなりません。しかし、実際には地域の名士が集まっただけの"形だけの理事会"になる場合が多く、さきほど引用した記事のように「抑止力」として機能しない場合があるのです。当然、きちんとやっているところのほうが多いのですが、私的流用しようと思えばいくらでも抜け道があるのが現状です。

続いて、「一般社団法人」ですが、これは最近ハードルが緩められました。資本金も不要、役員の身内制限もありません。そのため、夫婦二人でもすぐに作ることができます。株式会社よりも簡単です。営利法人である本業への誘導目的で社団法人を作る "公益法人モデル"も結構あります。はやりの"家元ビジネス"はその典型です。

そして「NPO 法人」。最近ではすっかり定着した名称です。社団法人に比べると、役員の身内制限が厳しく、役員の1/3以上の身内を入れることができません。また、株式会社のように利益を分配することができません。社団法人に比べると、公益性は高くなります。しかしながら、いずれの法人形態も、その気になれば"私的流用"は可能です。そのため、私個人としては、この三法人に寄付することはありえません。

ただし、これらの三法人には運営上のメリットがあります。それぞれ「持分」という概念がないため、相続の際、理事会が認めれば資金移動無しで理事変更が可能なことです。これは相続においても、法人を継続運営していく上でも有効な手段の一つだと思われます。

我々介護事業を営む営利企業から見ると、公益法人には不満も感じます。たとえば、社会福祉法人の5割近くは200人以上の職員を抱えています。そういう大規模な社会福祉法人は事業展開に積極的で、特別養護老人ホームの事業者に限ってみても、約7割が在宅向け介護サービスを、約3割が保育所や認定こども園を併せて運営しています。そのため介護や保育に参入した営利企業からは、「国や自治体の保護を受ける公益法人との競争条件が公平でない」との批判も出ているのです。

実際、介護や保育などを手掛ける社会福祉法人の8割が1億円以上の金融資産を持つことがわかっています。さらにそのうちの4割は5億円以上を保有しているというから凄いものです。大規模化していく公益法人が、企業と競うような分野で収益をあげて内部留保を積み上げているとの見方もできるのです。

―長谷川先生はNPO法人の運営もされていましたよね

そうなのです。今は営利企業の視点から意見を言いましたが、NPO法人も運営しているため、両者の気持ちが分かります。ちょっと複雑な思いです。私がNPO法人を設立する時は、初期の建築費の8割を国・県の助成金で賄いました。残りの2割は、国の融資を極めて低い固定金利で借り、その借入金もすでに完済しました。国の助成金でありながら減価償却もできるから驚きです。民間企業であれば減価償却費で借入れ返済を行うのですが、助成金を受けたNPO法人は、利益自体は少額でも現金だけは残っていきます。大変恵まれていますが、NPO法人は立替時には助成金はもらえません。そのための内部留保を厚くしているともいえます。

いずれにしても、これから皆さんが寄付をする際には、相手がどんな団体なのか、どのようにお金が使われるのかをしっかり吟味してからにしてほしいなと思います。(了)