ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第71回「本の紹介:あらゆる行動をする前に読んでほしい本...北端康良著『才能が9割』」

2014年10月28日 22:30

この本を読まずして、どんな行動を起こしても無意味とさえ思える、レベルの高い本です。


■才能を見つけると、生き方が変わる!

―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

この世の中には、「良書」と呼ばれる本がたくさん存在します。勇気を得られる本、行動を起こすきっかけとなる本、情報として優れている本、楽しい本など様々です。しかし、以前にもご紹介した北端康良さんの著書、『才能が9割』はレベルが違います。この本を読まずして、どんな本や映画を見ても、誰に会っても、どんな話を聞いても無意味です。またこの本を読まずして、どんな行動を起こしても無意味だとさえ思います。

この本に書かれている「働き方が変わる才能発見メソッド」を紹介します。

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1 才能の源泉を生み出すほどの衝撃的な出来事、"ディープ・インパクト"を探してください。
2 そして、"感情を行動に移した結果生まれる能力"である"才能"を知りましょう。
3 才能を、コアコンセプトで言語化しましょう。
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自分の才能が見つかり言語化できれば、その後の出会い、体験、情報のとらえ方が変わります。その結果、すべての行動が変わります。情報のインプットからアウトプットまでが劇的に変わるからこそ、1日も早くこの本を読んでほしいのです。

この本には才能を発見するための3つの質問も用意されています。

一つ目は、「20歳までにあったもの、なかったものは何ですか?」。自分が感情を揺さぶられたディープ・インパクトを探し、才能の源泉を特定するための質問です。

世の中には2種類の人間がいます。"ある人"と"ない人"です。"ある人"とは、金銭や愛情など「あるもの」に感動し、感謝してきた人たち。"ない人"とは「ないもの」に心を突き動かされてきた人たちです。私の同級生にも多いのですが、医師の2代目などは、"ある人"が多いようです。生まれた時から、物心ともに恵まれているため、自分の才能等を分け与えようとします。海外に学校を創ろうとしたり、世の中をよくするために政治活動に励んだりする人などはその典型です。客観的に見て判断するのではなく、本人がどう感じているかが重要になります。

私などは、全くの"ない人"です。才能にも恵まれず、経済的な余裕もなかったことを原動力にして、のし上がってきたともいえます。そのため、"ある人"の行動は理解できませんし、彼らからも理解されません。しかし、逆に"ない人"からは共感を得ることができるのです。

2つ目の質問は「今興味のある事、または問題だと感じることは?」。 この質問の私の答えは、"向上心"です。すべての人を見るときに向上心があるかどうかを問題視します。向上心のない人とは、できるだけ関わらないようにしています。ある意味、高いコンサル料金や、歯に衣を着せない発言は、そのための防御策と言えます。

最後の質問は、「気になる人は?」。この質問の私の答えは、小林一三、落合博満、上原春男の3人です。向上心ばかり追い求めていると、少し余裕が欲しくなります。優れた起業家でありながら、宝塚を創設した小林一三さんは自分の理想です。職人として一流であっただけでなく、監督してのマネージメントにも優れた落合博満さんは、私の憧れです。また、優秀な物理学者でありながら、研究成果を経営コンサルにまで昇華させた上原春男さんは私の目標です。

以上のように、3つの質問に答えるだけで、自分自身でも気が付かない才能を目覚めさせてくれます。一度さらっと読んだだけではこの本の価値は分からないと思うので、何度も何度も繰り返し読み、実際に筆をとって書き込むことが大切です。

―長谷川先生のディープ・インパクトは何でしたか?

新聞に私のディープ・インパクトを代弁するような記事があったので紹介したいと思います。

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"貧困子供のSOS「絶対! 医大に合格してみせる」
県立高校3年生「金をかけて勉強している奴らに負けたくない」。
卒業生から問題集をもらいボロボロになるまで繰り返し解いて、校内でトップを維持。両親は離婚、母親が病気で働けなくなり、生活保護成績優秀者の授業料を免除する私大と、国公立に目指す。浪人は許されない、生活保護の対象から外されるため生活費も自力で確保しなければならない!
「現役で合格できても、アルバイトと厳しい医学部の勉強を両立できるのか」。
不安を押し殺し、また机に向かう。
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これは、まさに私の"ディープ・インパクト"と同じです。私が大学受験をした30年前、医師になるには、国公立か私大の医学部に進学する必要がありました。しかし私大の医学部に行くためには6年間で数千万の費用が掛かります。そのため、サラリーマンの子供が医師になるには、国公立の医学部に入るしかありませんでした。ところが、一部の私大の医学部は、偏差値も低く、最近では難関私立医大となった愛知のH 医大など、英語の試験が"辞書持込み可"でした。そのため、私より成績の低い同級生が、早々と入学を決めたことに憤りを感じたものです。お金さえあれば、簡単に医師になれた時代だったのです。当時の私の感情は記事の学生と同じでした。高校 1年の1月に医学部受験を目標にしてから、一日も欠かさず、真夜中 2時までの勉強を続け、現役合格を果たし今に至っています。

この投書の中にある「あれもこれもと手を出すより、1冊の問題集を繰り返す」。これが正しい勉強法なのです。僕もそうでした。塾に行くこともなくひたすら一冊問題集を繰り返していました。また、「アルバイト厳しい医学部の勉強を両立できるか」と悩んでおられるようですが、今の根性があれば、必ずできます。

新聞の記事の学生さんは、かけがえのない"ディープ・インパクト"を手に入れ、将来素晴らしい医師になってほしいと思います。(了)