ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

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認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第52回「公的年金制度を知ろう。自分探しもホドホドに」

2014年6月17日 22:30

公的年金制度は老齢年金だけではありません。また、幸せに人生を終える4ポイントもお話しています。


■こんなにいい制度に入らないなんてあり得ない!
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

先日、患者さんで「夫婦とも無年金」の方がいらっしゃいました。お二人には大変申し訳ないのですが、改めて老齢年金の重要性に気付かされたできごとでした。

こちらのご夫婦はともに75歳を超えており、働いて収入を得ることはできません。子どもさんと同居して養ってもらっているようです。

しかもご主人は要介護状態。ケアマネージャーとしてはデイサービスなどを利用してできるだけ体を動かしてもらいたいところですが、お二人には自己負担分を支払えるほどの余裕がありません。その結果、自宅にこもりがちになって日常生活動作はどんどん低下していきました。ついに自宅での介護も不可能となり、入所施設を探すことになったのです。

残念ながら減免制度が利用できる特養や老健には空きがなく、月額10万円が必要となるグループホームに入所することになりました。この10万円は2人の子どもさんが分担されるそうですが、他にも家族を抱えているなかで毎月5万円の支出はかなりの痛手だと思います。

ご夫婦にどんな事情があったのかはわかりませんが、無年金だとどうしても子どもさんに負担をかけてしまいます。まさに「負の連鎖(スパイラル)」と言わざるを得ません。

―高齢になると、年金をはじめとする所得の有無がとても重要になりますね

その通りです。一方で私の外来には所得が多い高齢の患者さんもいらっしゃいます。例えばカルテに「75歳以上で3割負担」と記載がある場合。こういう人たちは生活に余裕があるせいかどこか優雅で実年齢より若々しい雰囲気を持っています。

ところでみなさん、公的年金制度は老齢年金だけでないことを理解していますか? 私は神経内科が専門のため、50代で脳梗塞・脳出血になった患者さんをよく診察します。一般的にこれらが原因で働くことができなくなった人には傷病手当が18カ月支給されます。ただしこれは厚生年金加入者(サラリーマン)に限った話で、自営業者にはありません。

その後障害が残った場合は障害年金が支払われます。自分が働けなくなってからの生計を立てるためには非常に重要です。

不幸にも死亡した場合は遺族に遺族年金が支払われます。これは残された配偶者、子どもさんにとっては命綱となります。

公的年金制度は老齢年金・障害年金・遺族年金も含めたシステムなのです。現役時代に適用される手厚い保障も一緒に組み込まれているわけですから、老齢年金が自分の掛金より少なくなることは当たり前なのです。

最近は公的年金制度を非難したり加入しなかったりする人が増えているようですが、それは年金制度の議論が老齢年金に偏りすぎていることも一因ではないでしょうか。もし民間でこの保険を作ろうとすれば膨大な掛け金が必要になります。

年金の詳細を知れば、これだけ優れた保険制度に加入しないことなどありえないと思うのですが......。

さて、先日以下のような記事が毎日新聞に載せられていましたのでご紹介します。

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【緊急一時保護】
認知症などの疑いで警察に保護された高齢者らのうち、名前が分からないために自治体が介護施設に暫定入所させるなど「緊急一時保護」の対象となった人が、2008年度からのおよそ6年間に少なくとも546人いたことが毎日新聞の調査で分かった。本人が氏名や住所を話せず、引き取る人も見つからないために取られた措置で、年間の対象人数はこの間にほぼ倍増していた。大半はその後、身元が判明するが、現在も身元不明のまま仮の名前が付けられた人が少なくとも5人いることも判明した。
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認知症になっても幸せに人生を終えるためには、①お金 ②家族 ③仲間 ④自宅
が大事です。この四つのうち一つでもあれば何とかなるものです。

特にお金があればほとんどの介護問題は解決すると言っても過言ではありません。しかし仮にお金がなくても家族がいれば何とかなります。家族がいなくても、仲間さえいれば何とかなります。お金・家族・仲間の三つがなくても、自宅さえあれば何とかなるものです。ところが四つすべて失うと上記の記事のような結末となります。

―自分の老後を見据えた人生設計が大事ですね

40歳を超えても独身で「まだ自分に合った仕事を探している」などという人に会うと、私はいつもこんな質問をします。

「あなたの家にはよほどの資産があるのですか?」

もちろん相手はけげんな顔をします。しかし資産がそれほどない家に生まれ、さらに一人っ子で結婚もせず転職を繰り返している人は十分な年金も掛けていないでしょう。

こういう人たちは先ほどの新聞記事のような結末へまっしぐらに向かっているようで私は怖くなるのです。現行の公的年金制度はさまざまな問題があるにせよ、加入しておくに越したことはありません。今回のタイトルにあるように「自分探しもホドホドに」です。(了)