ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第42回「健康診断も戦略が大事です」

2014年4月 8日 22:30

健康診断も戦略を持って受けましょう。


■大切な家族と会社を守るためにも!
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

「健康診断を受けるときにも戦略が大事」がテーマです。経営者のなかには高額な検診を受けただけで満足している人もいるようですが、医師の視点で見ると不十分な内容であることが多いです。

そもそも経営者が健康診断を受ける目的は何でしょうか? 一つは病気を早期発見するため。もう一つは「突然死」を避けるためです。突然経営者が亡くなってしまうと、スタッフのみならず家族も困ります。場合によっては会社がつぶれてしまうこともあります。

―突然死を引き起こす原因は何でしょうか?

代表的な疾患はくも膜下出血と心筋梗塞です。どちらも前触れなく発症し、あっという間に亡くなってしまいます。しかし現在はこの二つを前もってチェックする方法があります。

くも膜下出血は脳の血管にできた動脈瘤をチェックすることで予防できます。この検査はMRAです。ちなみにMRIは脳の現在の状況を見るだけで動脈瘤まではチェックできません。MRAまで受けることが大切です。

心筋梗塞は心臓の冠動脈の狭窄(細くなっているところ)をチェックすることで予防できます。ところが心臓の血管をチェックできる施設はあまり多くありません。以前東京在住の方から依頼されて探したことがあるのですが、そのとき見つけた「心臓画像クリニック飯田橋」はかなりおすすめです。ここではなんとCTでなくMRIで冠動脈の血管が描出できるのです。MRIはCTのように被ばくがなく、造影剤もいらないので理想的です。

とはいえご紹介する私がそのクリニックについて何も知らないというわけにはいきません。そこで平成26年2月5日に私も「プレミアムドック」を受けました。午後2時から約3時間半かけて採血、全身の動脈硬化判定、心電図・心エコー、内臓脂肪、頸(くび)の血管のエコー、頭部MRIとMRA、低被爆CTによる冠動脈石灰化スコア測定、心臓MRIとMRAが行われました。同日に結果も出て説明を受けられます。

幸いにも私の脳・心臓いずれの血管も正常で突然死の可能性はかなり低いようでした。16万8000円という値段も費用対効果を考えるとかなり安いと思います。検査画像の解析に優れたドクターがチェックしてくれる点も心強いです。東京近郊にお住まいの方はもちろん、地方在住の方にも自信を持っておすすめできるクリニックです。

―これだけ充実した検査を受ければ安心ですね

頭部と心臓のMRA健診を受けることで日本人の三大死因のうちの二つである脳血管障害と心臓疾患のリスクを減らすことができます。しかしまだ十分とは言えません。日本人の死因の第1位はがんですから、それに対する対応も必要です。

がんには多くの種類があります。そのためやたらと検診を受けても費用および時間対効果がありません。検診によって早期発見でき、治療で死亡率が低下するがんとしては胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんがあります。この五つに集中して検診を受けることをおすすめします。

―検診を受けるときのポイントを教えてください

胃がん検診では経鼻内視鏡検査が普及しています。バリウムによる造影検査は負担が大きいうえに、異常が見つかったときは再度胃カメラを飲むことになりますのであまりおすすめしません。

大腸がんについては、それなりの社会的立場にある方なら2年に1度は大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。ちなみにこの検査は術者の技量が大きく影響します。

私が知っている大腸内視鏡専門のクリニックは患者さんの3割が医療従事者、1割が医師です。私も検査をお願いしたことがあるのですが、食事制限は朝食を抜くだけ。想像以上に楽であっという間に終わってしまいました。この程度なら毎年受けてもそれほど負担にはならないと感じました。

肺がんについては、胸部XP検査だとかなり大きくならないかぎり発見は困難です。そのため2~3年に1度は胸部CT検査を受けたほうがいいと思います。ただし喫煙する人は2年に1度必要です。

上記の検査をまとめて1カ所で受けるよりも、それぞれ定評のある施設で受けたほうがいいでしょう。

―ところで最近、「検診不要論」が巷を賑わせているようですが......

「○○がんの健診をしても死亡率は減少しなかった。だから検診は不要である」などの説ですね。私もこのような状況を危惧しています。

そこで一つこんな例を挙げてみましょう。

「あるクラスに新しい先生が来た。先生は一生懸命指導したが、1年後のクラスの平均点は変わらなかった。よってこの先生は不要である」

果たしてこんな理論が成り立つでしょうか?

先生の指導をきっかけにして成績が大幅に伸びた生徒が数人いても、全く授業に関心を持たない生徒の成績はどんどん低下します。結果として全体の平均点は変わらなかったとしても、恩恵を受けた生徒が存在することは間違いありません。

これと同じことががん検診でも言えるのではないでしょうか。大切なのは全体の数字ではなく、自分の体の状態をきちんと把握してがんを予防することです。

マスコミや出版業界の極端な意見には注意が必要です。彼らが重視しているのは話題性の大きさと本が売れることであって、本当にみなさんの健康を考えているわけではないのですから。そのような情報に踊らされることがないようにしたいものです。(了)