「マーケットが示唆する日本経済の行方」という演題でお話いただきました。
■伝説のトレーダーが直言!「もはやインフレは不可避」
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?
私が会長を務めるNPO法人PAL研究会の新春オープンセミナーのお話をしたいと思います。NPO法人PAL研究会は、中小企業のアドバイザーとして弁護士・会計士・税理士・中小企業診断士・不動産鑑定士・社会保険労務士・司法書士・土地家屋調査士・FPなど各分野のエキスパートが結集した専門家集団です。医師である私も「師」の字は違いますが、メンバーに名を連ねています。
ちなみに「PAL」は以下の言葉の頭文字に由来しています。
P=professional プロフェッショナル(専門的な)
A=adviser アドバイザー(相談相手)
L=linkage リンケージ(結合)
―具体的にはどんな活動をしていらっしゃるのですか?
研究会は結成して16年を迎え、朝食会とセミナー主催を中心に活動しています。朝食会は毎月第1金曜日の朝6時から。早朝にもかかわらず毎回50名以上が集まります。これが16年続いているのですから、メンバーの意欲の高さがおわかりいただけると思います。
中小企業は弁護士などと顧問契約する余裕がないところが多いのですが、PAL研究会のメンバーになれば士業からアドバイスが受けられます。現在会員は100名以上おり、いまや地域のライオンズやロータリークラブをしのぐ勢いです。みなさんから大変好評いただいています。
―セミナーはどのくらいの頻度で行われているのですか
年に4回ほどです。平成26年1月16日の新春オープンセミナーには伝説のトレーダー藤巻健史(ふじまき・たけし)さんをお招きしました。ちなみにセミナーに誰を呼ぶかはNPO法人のスタッフがほとんど独断で決めます(笑)今回は私のたっての希望で藤巻さんをお招きしました。
当日藤巻さんは講演の30分前に到着されました。前日は奥様と温泉に宿泊なさったそうです。伝説のトレーダーと呼ばれる藤巻さんですが、実際にお会いしてみるとご家族思いのとても穏やかな人柄が伝わってきました。
講演までの30分は会計士の先生を交えて3人で歓談しました。有名人とこれほど密にお話しできることはやはり役得です。講演では聞けない情報もずいぶん得ることができました。
今回の演題は「マーケットが示唆する日本経済の行方」です。面白かったのは藤巻さんが冒頭でご自身の著書を紹介しながら「私の著書の題名はだんだんエスカレートしていますが、私に題名をつける権利はありませんので......」とお話しされたこと。この点は出版経験のある私も大いに共感しました。
―ところで藤巻さんの弟さんはカリスマバイヤーとして有名な藤巻幸大(ふじまき・ゆきお)さんですね
その通りです。今回のセミナーでもそのように自己紹介なさっていました。特に女性の間では弟さんの方が有名だそうです。ちなみに弟さんは「結いの党」、藤巻さんは「維新の党」の参議院議員ですからすごいものです。
さて最初の「つかみ」で場がこなれたところで、いよいよ本題に入ります。藤巻さんは「今日の私の話を信じても信じなくても自己責任ですよ」と繰り返していらっしゃいました。なぜなら日本人は何か得をしたときは自分の才覚、損をしたときは人のせいにする傾向があるからだそうです。
「自己責任」というとずいぶん突き放した言い方のようですが、藤巻さんやはり違います。続けて「今日私がお話ししたことがはずれても責任を取ることはできません。しかし私も一緒に泣くことになります」とおっしゃったのです。
口先ばかりの人が多い世の中ですが、藤巻さんは有言実行の人なのです。参加者一同、いっぺんに引き込まれてしまいました。
―藤巻さんは講演でどんなことを話してくださったのでしょうか
結論としては「インフレは避けられない」ということです。そこで藤巻さんが行っている対策としては「銀行から低金利(固定金利)でお金を借りて不動産を購入すること」「ドル資産をたくさん持つこと」だそうです。
私も10年前から外貨を買い続けており、藤巻さんと同じ考えです。外貨の話をすると「円高になると損をする」と言う人がよくいますが、私は外貨の金利を目当てにしているわけではありません。インフレが起きて円安になったときの「保険」として購入しているのです。藤巻さんも講演で同様のことをおっしゃっていました。
これまで何回もお伝えしているように、私は堺屋太一さんの『平成三十年』(朝日新聞社)を読んで以来ドルMMFを購入しています。
外貨MMFは金融機関の窓口で勧められることはほとんどありません。実はこれこそ「買い」のサイン。長谷川家の家訓「銀行員の勧めるものを買ってはいけない」の逆張りでもあります。
藤巻さんのことをもっと知りたい人は、ぜひ著書を読んでみてください。考え方が過激すぎるという意見もあるようですが、最近は藤巻さんと同じような論調の人たちも少なくないようです。ただし、どんな判断をしてもそれはあくまで自己責任。この点は忘れずにいてください。(了)