ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第38回「これぞプロ...元NHKアナウンサー矢野香さんの講演」

2014年3月11日 22:30

矢野香さんの素晴らしい講演を、より多くの方に聞いてもらいたいものです。


■コミュニケーション能力をアップさせるコツを大公開!
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

平成26年1月16日、ブレイングループのスタッフおよび地域のケアマネージャーさんを対象として、元NHKアナウンサー矢野香さんに「信頼を勝ちとる話し方」という講演をしていただきました。私も1年ほど前から矢野さんのスピーチコンサルティングを受けています。当日はお師匠さんの「芸」を見る弟子のような緊張感がありました。

講演は最初の「つかみ」からスタート。その後、なぜ矢野さんは講演が上手にできるのかが説明されます。さらに大事なポイントは繰り返し聴衆に伝えてくださいました。いずれも私がスピーチコンサルティングで指導を受けていることと同じで、それらが完璧に行われていました。

―講演の内容を具体的に教えていただけますか?

それでは矢野さんの講演の一部を抜粋してご紹介しましょう。

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・コミュニケーションにおいて、「言語」では差が付きにくいが「非言語(身振り手振りなど)」は差が付きやすい。だから「非言語」をもっと活用しよう。医療介護の場合、相手に伝えるときは「言語」と「非言語」を統一させると信頼に繋がる

・声を掛けられたら、一瞬でいいから相手を見ること。アイコンタクトは「量」ではなく「質」である

・大事なことは相手と息を合わせること。辛いときは吐き、笑うときは吸う

・見た目のポイントは三つ......①眉と額  ②目  ③口と歯

・信頼感を得る笑顔は、「ラフ(歯が見える笑い)」ではなく「スマイル(ほほえみ)」

・質の良いコミュニケーションに時間は関係ない
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矢野さんは講演の間、少しも聴衆の気持ちをそらしませんでした。もちろん終了も時間ぴったりです。途中で大事なポイントを繰り返してくださるおかげで、講演終了後の聴衆の理解が統一されていたことにも感心しました。

私はつい喋りすぎてしまうため、人によって理解した内容がバラバラになってしまうのです。この点については猛省しました。矢野さんの講演は終了後のアンケートからも満足度が高かったことが伝わってきました。「今までのどんな講習よりも勉強になった」と書いている人もいました。

―矢野さんは同日の夜も講演してくださったそうですね

隣の多治見市で武田製薬が主催する医師向けセミナーの講演もお願いしました。最近は製薬メーカーのセミナーが急増しており、医師を集めることすら難しい状況です。特に平日の夜は10名集めるのもやっとです。

今回メインの講演は医師にお願いしていたので、矢野さんはいわば前座でした。私は内心どうなることかと思っていたのですが、ふたを開けてみると24名もの医師が集まっていました。まさに快挙です。改めて矢野さんの力を実感しました。

―夜に行われた講演の内容を教えてください

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・医師が限られた時間内に言葉だけで患者さんに説明するには限界がある。NHKのニュースも外来も数分が勝負。だからこそ「非言語」をフル活用しよう。特に患者さんの視覚や聴覚に訴えること。それには医師の視線、表情、身振り手振り、姿勢、服装、声の高さ、大きさなどが含まれる

・医師の「スマイル」と「アーム」の動きの組み合わせで最も好感度が高いのは、診察終盤で「スマイル」、「アーム」の動きは中程度。手を動かすときは机から肩の高さまでの範囲で

・自分のクリニックを「親しみやすさ」「活動性」「信頼性」の三つのうち、どのカテゴリーに分類するか。これは医師自身だけでなく、クリニックの内装、スタッフにまで行き渡らせる必要がある。これがハッキリしないドクターは訴えられる危険性が高くなる
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いつもは不機嫌そうな顔をしているドクター達も、矢野さんの講演にどんどん引き込まれていることが伝わってきました。「○○なタイプの先生方は訴えられる可能性が高い」と鋭く指摘されたときなどは、誰しも背筋が伸びる思いだったでしょう。矢野さんの講演を聞いた医師が増えれば、きっと多くの患者さんが救われるはずです。

もちろん私も矢野さんのパーソナルトレーニングのおかげで、日々の診療における患者さんへの声かけ、お見送りの仕方などが変わってきました。先日はあるスタッフが褒めてくれました(笑)トレーニングを受けて1年ほど経ち、ようやくスタッフにもわかってもらえるレベルになってきたようです。

みなさんにも実際にパーソナルトレーニングを受けることをお勧めします。もちろんある程度の費用はかかりますが、こんなに素晴らしい講師の矢野さんに「できるだけ安くしてほしい」などとは思わないでください。プロの技術には相応の対価が必要です。その費用対効果を考えれば安いものです。(了)