ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第31回「経営者の皆さん、必見です!『ダンダリン 労働基準監督官』」

2014年1月21日 22:30

ドラマもしくは漫画を観て社員が勘違いをし、クレームを言ってくる可能性があるかもしれません。一度目を通されることをお勧めします。


■ドラマの反響に対応できる準備はしていますか?
―今回はテレビドラマのお話をしてくださるそうですが

昨年(2013)10月から放送された竹内結子主演のテレビドラマ『ダンダリン 労働基準監督官』をご存じでしょうか。このドラマの原作は『ダンダリン一〇一(いちまるいち)』というマンガで、行政書士を主人公にした『カバチタレ!』と同じく田島隆※さんが原作者です。※『ダンダリン一〇一』ではとんたにたかし名義

ストーリーは労働基準監督署を舞台として、主人公の段田凛をはじめ労働基準監督官たちが「労働基準法」や「労働安全衛生法」その他所管法令を適用してブラック企業を摘発し、日本の労働者を守っていくというものです。とはいえあまりにも労働者寄りであるため、経営者からすると納得がいかない場面も少なくありません。

またこの中では主役を取り巻く労働基準監督署の上司・同僚が典型的な公務員として描かれています。前例主義、事なかれ主義。困り果てた労働者が相談に来ても全く感情が動きません。

これまでも繰り返し述べていますが、認知症を予防するためには感情を司る「扁桃核」を刺激する必要があります。そして扁桃核を「快」にするには他人を喜ばせることが第一。ところが彼らの扁桃核は麻痺してしまっているようです。

―主人公・段田凛を支持する人は多いでしょうね

正直なところ、本当に段田凛のような労働基準監督官がいたら経営者としては相当に面倒だと思います。確かにひどい経営者はいます。しかし平気で遅刻や無断欠勤をしたり、権利ばかり主張して義務を果たさなかったりする非常識な労働者がいることも事実。経営者ばかり責めることはできないはずです。

ちなみに前述の『カバチタレ!』では、行政書士が業務上可能ではあるものの現実的ではない仕事にまで取り組んでいました。『ダンダリン』においても現実にはほとんどありえないことが描かれています。

それにもかかわらずマンガやドラマを見た人が社会保険労務士に電話してくるケースが増えているそうです。自分の会社の社員が勘違いしてクレームを言ってくる可能性もありますので、経営者も『ダンダリン』の原作マンガもしくはドラマに目を通しておくことをお勧めします。

私は経営においては税務・法務・労務の優秀なプロを使いこなすことが大事であると考えます。税務や法務はさておき、社会保険労務士と顧問契約を結んでいる中小企業はまだまだ少ないようです。

こう言うと経営者の多くが「うちは労務士さんにお願いしています」と回答します。しかしそのほとんどは給与計算を依頼しているにすぎません。そうではなくもう一段上の顧問契約が重要なのです。

―顧問契約した社会保険労務士と一緒に何をすればいいのでしょうか?

まず就業規則を作成しましょう。もちろん単に作るだけでは意味がありません。自分の理念がきちんと反映されていて、働く人のやる気を呼び起こす内容にする必要があります。年に1回、状況に合わせて修正することも大事です。

また新規雇用時だけでなく、年1回全従業員に労働条件契約書を交付することも重要です。これらの管理や確認を顧問労務士にお願いし、そのうえで経営者が実行するのです。当グループでは全従業員の雇用・退職について顧問労務士に確認してもらっています。中には助成金が出るケースもあり、その額が顧問料以上なることさえあります。

残念ながら医療・介護系事業所の多くは労務管理をきちんと行っていません。そんな状況ですから、労務管理に力を入れている会社はスタッフの信頼を得ることができます。その結果、長く勤めてくれる人が増えるのです。

「スタッフが集まらない」「すぐに辞めてしまう」と嘆く前に、社会保険労務士と顧問契約を結んで盤石な労務の仕組みを構築することです。すぐに効果が現れるものではありませんが、先送りしないことです。そうすれば『ダンダリン』も気楽に見ることができるでしょう。(了)