ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第18回「公務員はなぜ認知症になりやすいのか~ボケやすい脳、ボケにくい脳3」

2013年10月15日 22:30

今回は、扁桃核を刺激させるための具体的なお話です。


■扁桃核はトラブルがお好き!?
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

前回まで認知症の現状や認知症における海馬と扁桃核の関係についてお話ししてきました。その中で扁桃核を刺激する生活が認知症の予防になると指摘しましたが、今回は具体的な例を挙げてご紹介します。

扁桃核は別名「感情脳」です。そのため扁桃核の刺激を伴った記憶は長く定着します。例えばすべてが順調にいった旅行ほど記憶が薄れがちではないでしょうか? 一方、台風に遭遇して帰りの飛行機が遅れたり予定がキャンセルになったりした旅行はいつまでも覚えているものです。

このようなドキドキ・ハラハラした感情を伴う記憶は扁桃核を使った「感情記憶」といいます。私も経営者仲間と香港に旅行したとき、ものすごい台風が来て大変な目に遭ったことがありました。しかし今でも仲間と会うと当時の話題で盛り上がりますし、いまだに記憶も鮮明です。

次に料理という行為を考えてみましょう。実は料理をするとき、脳はとても複雑な働きをしています。まず人は料理のできあがりを右脳でイメージします。それから左脳を使って材料を選び、買い物をして実際に調理を行います。ちなみに調理は右脳と左脳の共同作業です。

この一連の作業を継続させるのも感情を司る扁桃核です。自分が作った料理を食べる人が喜ぶ姿を思い浮かべたり、「おいしい」と言ってもらったりすることはまさに「快」です。この記憶があるから、世のお母さんたちは疲れていても子どものために食事を作るのです。

―楽しい食卓で美味しいものを食べるときも扁桃核は「快」になりますね

私は母親から「結婚するなら一緒に食事をしていて楽しい人としなさい」とよく言われていました。これは本当に正しい言葉だったと思います。

なぜなら結婚生活は「起床→朝食→出勤→帰宅→夕食→就寝」の繰り返し。一緒にいる時間のほとんどは食事です。どうやら人生のパートナーを見つけるときに扁桃核の「快」「不快」の判断に身を任せることは理にかなっているようです。

したがって男性の扁桃核を刺激するためにおいしい料理をつくることも大事です。「男が浮気をしても料理の上手な奥さんのもとには帰ってくる」という言葉もあるように、女性は男性の「胃袋」ではなく「扁桃核」をつかむことが大事なのです(笑)

ところで扁桃核は夢と現実を区別することができません。そのため映画を見たり本を読んだりすることは扁桃核を刺激する点からもおすすめです。そもそも社会人なら月に2冊の読書、1本の映画鑑賞ぐらいはしてほしいものです。営業マンや美容師などの客商売であれば最低限の義務だと思います。

ただしテレビは読書や映画に比べると受動的なので脳の働きからするとおすすめできません。自分から見ようとする能動的な態度が前提となる読書や映画とは大きな違いがあります。

■「不快」を「快」にするコツ
優秀な経営者には扁桃核が過剰に興奮している人が多いようです。ビジネスの世界では外的要因から思わぬ困難に見舞われることがありますが、彼らはそんなときでも努力して業績が回復したときのことをイメージします。常にワクワクしながら頑張れる人が優秀な経営者であり起業家だといえそうです。

―起業しても10年後に生き残れるのは数パーセント。非常に厳しい世界です

それでもトライするのは「自分なら大丈夫だ」と根拠なく扁桃核を刺激できるから。創業者や優秀な経営者はもれなくハードワーカーです。はたから見れば異常と思われるかもしれませんが、当人は明確な目標に向かって動いているだけなので全く苦痛ではありません。それが彼らにとっては「快」なのです。

人生やビジネスでは自分が嫌なことをしなければならないときがあります。そこで扁桃核が感じる「不快」を「快」に変えるちょっとしたコツをお教えしましょう。

一つ目は「自分のためでなく人のためと考える」。人は不快なことであっても、親・家族・スタッフのためと考えればけっこう頑張れるものです。

二つ目は「困難の視点を変える」。目先の困難ではなく、その先にある目的に目を向けましょう。そうすればワクワクして頑張れるはずです。

三つ目は「良い仲間を見つける」。あなたが何かに挑戦しようとしたとき、すぐ否定する人がいると気持ちが萎えてしまいます。反対に「君なら絶対にできるよ!」と励ましてくれる仲間がいれば「不快」が「快」に変わります。

以上の三つで「快」「不快」を自在にコントロールすることが可能です。人生には良いことも悪いこともありますが、常に扁桃核が「快」と感じるように工夫してみましょう。それが認知症予防にもつながります。(了)