ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

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認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第17回「公務員はなぜ認知症になりやすいのか~ボケやすい脳、ボケにくい脳2」

2013年10月 8日 22:30

今回は、脳の中の扁桃核を意識するお話です。


■認知症予防のカギを握る扁桃核
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

このたび私が出版した本の副題は「ボケやすい脳、ボケにくい脳」ですが、これは脳の部位の中でも「扁桃核」を意識することをテーマにしています。そこで本題に入る前に脳の構造を説明しましょう。

脳は大きく三つの部位に分けられます。一つ目は「脳幹」。これは最も古い原始脳と言われ、呼吸や心臓の働き、五感に関係しています。この脳がコントロールしているのは呼吸の調整、血液の調整、体温調整、睡眠調整など生きるために必要不可欠なものです。

この脳幹の周りを包んでいるのが二つ目の「大脳辺縁系」です。脳幹より少し発達したもので、怒りや快楽といった喜怒哀楽の感情に関係しています。

さらに一番外側にあるのが三つ目の「大脳皮質」。脳の大半を占めており、先ほどの大脳辺縁系を包むようになっています。思考や想像、意欲、記憶のほか運動や知覚などを司り、「霊長類の脳」とも言われています。

―扁桃核はどの部位にあるのでしょうか?

扁桃核は大脳辺縁系に存在しています。脳としては一番新しいわけでもなく、かといって古くもない段階です。私たちが意識しなくても働いている脳幹と覚醒時に働く大脳皮質の間にあるので、扁桃核は無意識と覚醒の間に属しているといえます。

扁桃核は別名「感情脳」と呼ばれ、感情を司る中枢とされています。また記憶の中枢である「海馬」が隣接しており、大脳皮質とも密接につながっています。

突然ですが、有名人の結婚会見を思い浮かべてください。「パートナーのどこが気に入りましたか?」という質問に対してさまざまな長所を挙げる場面がよくありますが、これは大脳皮質を使って後から理由付けをしているにすぎません。この人が自分にとっていいか悪いかの判断は扁桃核が瞬時に行っているのです。

例えばあなたがある異性に出会い、素敵だと思ったとします。ところが一緒にいた友人は全く好みではないと言う。こんなとき、あなたと友人はその人に対する判断を一瞬で下しているはずです。

実はこれも扁桃核が五感から得た情報を過去の記憶のデータと照らし合わせて行っていることです。この人は昔仲が良かった人、もしくは嫌なことをされた人に〇〇が似ている......と即座に解析し「快」「不快」を判断しているのです。

ちなみに娘が年頃になると父親の匂いを嫌いになることがありますが、これは種の保存という観点からすると極めて合理的です。父親にとってはさびしい話ですが......。

一方、男性が自分の母親に似ている女性を選ぶ傾向が高いことも説明できます。扁桃核は子どもの頃に母親から受ける感覚を「快」と認識するので、どうしても母親に似た女性を「快」と判断してしまうのです。とはいえ講演などでこの話をしても全く受けません。ほとんどのお嫁さんたちは自分が姑に似ているなどとは思いたくないようです(笑)

一見独断的とも感じられる扁桃核の働きですが、これは自分を守るために必須の機能であったことを忘れてはいけません。例えば大昔の人類がジャングルを歩いていて、ニョロニョロした不気味なものに遭遇したとします。無防備に近づいたら襲われるかもしれません。そのため扁桃核が瞬時に「不快」と認識して逃げることが自分の安全を守ることになったのです。

■いくつになっても感性を磨こう
さて一般的に認知症患者さんには記憶を司る海馬の萎縮が見られますが、隣接する扁桃核の萎縮も同時に報告されています。時には扁桃核の萎縮が先行していることも。このことから扁桃核を意識することが認知症の予防につながるといえます。

―扁桃核を意識するための心がけを教えてください

みなさんは日々の生活の中で「快」「不快」を意識して過ごしていますか? 扁桃核を刺激するためにはまず情報を収集することです。日頃からあらゆることに関心を持ちましょう。

毎日奥さんが作ってくれる料理を無意識に食べていたり、「何を食べたって同じだ」などと思っていたりする人は要注意です。家族や友達の服装や髪型の変化も関心がなければ気が付かないでしょう。

忙しい生活の中では、いろいろなものに気を配る余裕はないかもしれません。年を取るにしたがって感性が鈍るのも事実です。しかしこれこそが認知症のリスクにほかなりません。自分から行動・実行して感性を研ぎ澄ませ、扁桃核を刺激し続けることが非常に大事なのです。(了)