ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第16回「公務員はなぜ認知症になりやすいのか~ボケやすい脳、ボケにくい脳1」

2013年10月 1日 22:30

今月は4回に渡って長谷川先生の3作目となる新刊の中から、認知症に関する詳しいお話をお届けします。今回は「認知症の症状」について。


■認知症専門医が算出した驚くべき数字!
―平成25年9月30日、長谷川先生の第3作目となる著書『公務員はなぜ認知症になりやすいのか~ボケやすい脳、ボケにくい脳』が幻冬舎新書から発売されました

地方の開業医である私が自費出版でなく商業出版できたきっかけは、江上治さんの限定20人という幻の講演に行ったことでした。そのときビジネスブックマラソンで有名な土井英司さんと名刺交換する機会をいただき、そのご縁から出版プロデュースと幻冬舎新書からの出版が実現したのです。

ちなみに私の担当編集者は、以前ポッドキャストでもご紹介した『ダンナ様はFBI』(田中ミエ著)を手がけた小木田順子さんです。本書の出版に至るまでの不思議なつながりに驚くとともに大変感謝しています。そして今回から4回にわたって本書の中から「認知症予防のための転ばぬ先の知恵」をご紹介したいと思います。

―現在、認知症患者の数はどれくらいなのでしょうか?

ごく最近まで約250万人と言われていましたが、平成25年の初めに300万人と修正されました。この数字は介護保険の主治医の意見書から推定したものです。しかしこの意見書は認知症が専門でない医師も書くため、軽度の認知症患者さんは見逃されているのが実情です。

そこで平成25年6月1日、認知症専門医が数カ所の自治体で認知症の罹患率を算出しました。その罹患率に人口をかけて導き出された認知症患者さんの数は、なんと462万人です。

―日本の人口は1億2700万人。およそ4パーセントの人が認知症ということになります

この462万人の認知症患者さんに4人ずつ家族がいるとすると、認知症にまったく関わらない人はほとんどいない計算になります。私も病院での診療を離れた経営者同士の懇親会などで「身内に認知症がいて......」と相談されることがよくあります。

ところでみなさんは「認知症と物忘れ」の違いについて疑問を持っていませんか? 例えば医師から「昨日の昼食は何を食べましたか」と聞かれ、そこで何を食べたか思い出せなければ「物忘れ」。食べたかどうかという行動自体を思い出せなければ「認知症」だと説明された方も多いと思います。

しかし「昼食を食べた」という行動自体を忘れてしまう状態は、かなり認知症が進行しています。その時点で判明しても遅すぎるのです。本書でも「物忘れに困ってからでは遅すぎます」と表現しましたが、早期発見のために「この症状が出たら受診すべき」という例をいくつかご紹介しましょう。

■おかしいなと思ったら、すぐに受診を!
まず代表的なものは「さっき言ったことを数分で忘れる」「同じ話をする」。これらの症状が数カ月でどんどん悪化してきたときも認知症の可能性が高くなります。

ここで注意していただきたいことがあります。それは認知症か否かの判断をするとき、血のつながった家族の意見は当てにならないということ。様子がおかしいと感じていても、「自分の親は認知症であってほしくない」という思いから希望的観測をしたり受診が遅くなったりするからです。その点近所の方、もしくは家族の中でも義理の息子・娘さんは比較的冷静な目で見ることができます。

また財布・通帳の管理、ATMからの出金、買い物、小銭の支払いなどの金銭管理が自力でできているかどうかも大切です。女性であれば料理も認知症発見のきっかけになります。レパートリーが減って同じものばかり作る、味が異常に濃くなったなどの兆候がないか見てください。

さて、ここまでは物忘れを中心とした「中核症状」の事例でした。さらに認知症が進行すると次に「周辺症状」が現れます。これは性格の先鋭化・変化、幻覚、妄想、徘徊等が代表的です。

―周辺症状が出現すると、ご家族は大変な苦労を強いられますね

以前は穏やかだったおばあちゃんが怒鳴り散らす、「庭に変な人がいる」と言っては警察に何度も電話する、「嫁がお金を盗った」と言い張る......これらの行動が家族関係までも狂わせてしまうのです。

そうならないためにも認知症の早期治療が必要です。中核症状にとどまっているうちは薬が非常に効果的です。認知症の薬は脳の細胞間の血流を改善するので、細胞が残っているほど効くのです。

周辺症状が出現した場合は、本書でも紹介したメマリーという薬がよく効きます。実際に多くのご家族から「穏やかになった」と喜びの声が寄せられています。

認知症は治療不可能な病気ではなく、早期に治療すればするほど高い効果が得られます。仮に病気が進行しても薬で周辺症状をコントロールできれば穏やかに過ごすことも可能です。これらのことはぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。(了)