ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第15回「投資も、気概を持って」

2013年9月24日 22:30

目先の利益でなく、この国のために株価が下がった時に勇気を持って購入しましょう。


■利ざや目的では買いません
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

平成25年5月、私は所有している株式をすべて売却しました。ちょうど日経平均株価が1万5000円になったころです。周囲からは「まだ上がるのでは?」という声もありましたが「まだはもうなり、もうはまだなり」の格言に従いました。

―その格言はどんな意味なのですか

市場参加者の多くが「そろそろ天井だろう」と思っている段階ではまだ高値になる可能性があり、「まだ高値になる」という雰囲気のときは既に天井だという意味です。それにならって私も今回は天井に達したと判断しました。

実をいうと私は安く株を購入して高く売る「キャピタルゲイン」を狙うことは好きではありません。株を購入したことも過去に2回ほどです。

1回目は2001年9月11日、アメリカで発生した同時多発テロのとき。それまで株の知識はありましたが購入はしていませんでした。ある日のこと、テロ事件直後の混乱する証券会社の様子がテレビに映りました。一刻も早く株を売ろうと人々が殺到していましたが、その中に「私は株を売りに来たんじゃない、買いに来たの!」と叫んでいるおばあさんがいたのです。

私はその姿を見て「株とはこういうときに買うものなのか」と学び、さっそく購入することにしました。当時は投げ売り状態でしたので、数年後に売却したときはかなりの利益になりました。

2回目は08年のリーマンショック後。当時の日経平均株価は8000円程度でした。私が購入した後も株価は低迷していましたが、株のことはしばらく忘れていました。そして今回のアベノミクスです。日経平均株価1万5000円でも、仕入れが安いので十分な利益になりました。

―適度な距離を置きながらも、株を購入するのはなぜですか?

日本は資本主義ですから、株式は常に成長し続ける必要があります。そのためみんなが悲観的になって売り一色になっているときこそ、日本の将来のために購入するべきだと考えているからです。

私の投資基準だと、株価が8000円程度に下がったら買い支えることにしています。そのときは「さらに下がったらどうしよう」などとは思いません。微力ながらもこの国の一助になろうという気概を持っているのです。9・11の同時多発テロやリーマンショックがあろうとも、めげている人ばかりではいけないと思います。

その後株価が上がって購入する人が大勢出てきたときには売却し、少し利益をいただきます。ただしそのお金はまた株式市場が下がったときに買い支える資金として蓄えておく。これが私の日本株式に対するスタンスです。

■投資先は四つに分類できる
―先見の明がある長谷川先生に投資のアドバイスを求める人も多いのでは

これからどこに投資すべきか、こんな商品はどうかと相談されることがよくあります。
ここでは投資の基本的な知識についてお話しましょう。

まず投資先は「債券」と「株式」に大きく分かれます。これは経営者であればすぐに理解できるはず。なぜなら経営者にはおなじみの貸借対照表を見ると、負債の部に「債券」、資本の部に「株式」があるからです。

負債である「債券」には返済義務があり、投資する側からするとリスクは少ないといえます。よってこれは「ローリスク・ローリターン」です。会社が発行する「債券」は社債、国なら国債と呼ばれます。

一方資本である「株式」は返済義務がなく、利益が出れば高い利回りが期待できます。とはいえその会社が潰れれば紙切れ同然となる可能性があり、これは「ハイリスク・ハイリターン」といえます。

さらに「債券」と「株式」それぞれに日本円と外貨を組み合わせると、投資先は四つに分かれます。

まずは「日本円の債券(日本国債)」です。あまりピンと来ないかもしれませんが、実はみなさんも銀行預金や月々支払う年金保険料を通して間接的に購入しているのです。そのため改めて個人向け国債を購入する必要はありません。

そして「日本円の株式」ですが、これは目先の利益ではなく日本の将来のために購入してください。最初にお話したように株価が下がったときは勇気をもって購入し、上がったら売却するという方法で10年のうちに数回つきあうことをおすすめします。

―外貨についてはどう考えればよいでしょうか?

話に水を差すようですが、そもそも「外貨で得をする」ということはそれだけ「日本円の価値が下がった」ということです。

海外に生活基盤があるなら別ですが、基本的に日本で暮らしているのなら自国のためになることを考えるべきではないでしょうか。だから私は「外貨では損をしたほうがいい」と言っています(笑)

もし外貨を購入するとしたら、資金に余裕がある人に限られます。その場合も万が一の事態に備えるために少々購入するぐらいでいいのではないかと思います。

外貨の「債券」と「株式」を比較すると、ただでさえ変動が激しい外貨で「株式」を購入することはおすすめしません。あえてリスクを掛け合わせる必要はないからです。外貨で購入するなら「債券」だけで十分だと思います。

ちなみに数ある外貨の中で、私はアメリカドルしか考慮していません。その理由は人口動態。100年後も現在の人口ピラミッドを維持できる国はアメリカだけだろうと考えているからです。

その他の投資先として不動産や金・プラチナがありますが、これも資金に余裕がある人だけにしておいたほうがよさそうです。その際もどれかに偏らないようにしましょう。

そしてもし人からよくわからない商品を薦められたら、

・日本円の債券(日本国債)
・日本円の株式
・外貨の債券
・外貨の株式

のうちのどれに当てはまるか自分で考えてみてください。上記のいずれにも当てはまらない商品には決して手を出さないことです。最後に、銀行員の家系である長谷川家の家訓をご紹介します。

「金融機関が薦める商品は購入してはいけない」

銀行員だった私の父が常々口にしていました。みなさんもぜひ心に留めておいてください。(了)