ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第13回「年収と年商の違いとは」

2013年9月10日 22:30

"年収"と"年商"の違い、あなたは分かりますか?


■はりぼての数字にだまされてはいけません
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

間違えやすい「年収」と「年商」の違いについてです。テレビや新聞などを見ていると世の中には「年収」と「年商」の違いを理解していない人が多いことに気付かされます。

よくテレビ番組で「若手経営者の年商が10億円!」と聞いてタレントや出演者たちが驚くシーンがありますが、経営者からすると滑稽です。

しかし私たちの人生の中で「年収」と「年商」の違いを教えてもらう機会などほとんどないのですから、やむを得ないのかもしれません。

―改めて「年収」と「年商」の違いを解説していただけますか?

例えば素敵な青年実業家がいたとします。その彼が「年商1億円」である場合と「年収1億円」である場合ではどちらがすごいと思いますか? もちろん答えは「年収1億円」です。

「年商」はあくまで売上金額。実際の収入=「年収」ではありません。仮に年商が10億円でも、経費が11億円なら赤字です。ちょっとした表現の仕方で意味が違ってきますから、ニュースなどを見るときには注意が必要です。

特に若い女性は男性経営者の「年商10億円」という言葉にだまされてはいけません。冷静に「年収」はいくらかを知ったうえでパートナーを選びましょう。

―年商10億円ならば、かなりいい状況だと言えるのでは?

それはビジネスモデルによります。例えばモノを仕入れて売るビジネスの粗利はだいたい25パーセント。金額にすると2.5億円ほどです。そこから人件費・その他経費を支払い、残りが営業利益および役員報酬の源泉になります。そう考えると年商10億円でも大したことはありません。

かたや医療・介護・コンサルティングなど仕入れがほとんど必要ないビジネスだと、ほぼ「年商=粗利」となります。この場合で年商10億円ならそれなりの役員報酬を得ることができるでしょう。

―やはり「お金の知識」を身に着けることは大事ですね

「お金の知識」は人生経験を積んで身に着けるものです。そうすればマスコミの報道に踊らされることもなく、「悪徳業者にだまされた!」と嘆くこともないはずです。

ところが「お金の知識」がないまま経営者になる人も少なくありません。特に経営を始めたばかりの個人事業主が注意すべきは年商1000万円に差し掛かる頃。そのぐらいになると大きなお金を動かせるようになったと勘違いしたり、ちょくちょく浪費したりするようになるのです。

年商1000万円だと、仮に利益率が60パーセントでも年収は600万円にすぎません。そんな状況で無駄遣いをするとちょっとした外的要因の変化で破綻してしまうおそれがあります。この10年間でもリーマンショックや東日本大震災が起きたではありませんか。常に危機感を持つことが大事です。

私は年商1億円を超えるまではがむしゃらに働いて売り上げを上げるべきだと思います。もちろん売り上げを増やすだけでなく、法人・個人いずれにおいても無駄遣いをせず地道な生活をすることは言うまでもありません。

そして年商10億円に近づくと今度は売り上げ第一主義に陥り、利益率を軽視しがちです。この時期はたとえ売り上げを減らしても利益率を維持する発想に転換する必要があります。前回お話しした「家業から事業経営に脱皮するための組織づくり」に着手するときです。

自分の血縁によらない人から経営者を登用できる組織にし、それから年商10億円を超えると非常に安定した企業になります。「お客様のため、従業員のため、社会のために永遠に続けるべき組織にする」という意識を持つことが大切です。

ところでこんな言葉を知っていますか?

「100社が同時に起業したとして、10年後に残っている会社は5社。そのうちの3社はなんとか食っていけている状態。順調に伸びているのは、100社のうち2社だけ」

これほど経営は厳しいのです。「お金の知識」をしっかり身に着け、真摯な態度で経営に臨まなければすぐさま「100社のうちの98社」になってしまいます。

やや話がそれてしまいましたが、ぜひみなさんも「年収」と「年商」の違いに注意して考えることから始めてみてください。(了)