税務調査のルールを知ると、無用な心配をする必要はありません。
■国税職員にも「都合」がある
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?
私は毎月4、5本レガシィマネジメントグループが販売している税理士向けCDを聴いています。1本60分程度なので往復の通勤時間内に聴けて大変便利です。門外漢には難しい部分もありますが、3回ぐらい繰り返せばだいたい理解できます。
このCDのおかげで当グループの「会社分割」や「グループ会社化」が実現したのですから、私の大事な情報源です。そこで今回は私が聴いたCDの中から『社長さんができる税務調査の防衛術 ここだけの話』(講師:坂之上満)をご紹介しましょう。税務調査は経営者の心配の種ですが、これを聴くと少し気が楽になるはずです。
―そのCDにはどんな内容が収録されているのですか?
講師の坂之上さんは「国税の1年を知る」と題し、税務調査が行われる時期によって職員の力の入れ方が異なると解説しています。国税職員の人事異動は7月1日。それを起点にして12月末まで調査が行われます。つまりこの時期に行われる税務調査は税務署がかなり力を入れているということです。
一方、1月1日から3月末は確定申告時期。そのときは部署が違っても手伝いをしなければならないので税務調査の頻度が減るそうです。そして4月1日から6月30日は件数ノルマを意識した職員が「駆け込み調査」をする傾向があり、比較的簡単な調査で終わるといわれています。
また「国税庁税務運営方針」を知っておくと役に立つそうです。そこには
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限られた稼働量で最も効率的な事務運営を行うため、調査は納税者の質的要素を加味した上、高額な者から優先的に、また悪質な脱漏所得を有すると認められる者及び好況業種等重点業種に属する者から優先的に行うこととする。
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とあり、「高額な者・好況業種を優先する」とはっきり示されています。対象になると考えられる人は日頃から備えておく必要があるでしょう。
―先ほど「件数ノルマ」という言葉が出ましたが、本当に存在するのでしょうか?
公式にはないことになっています。とはいえ内々には職員を評価するポイントとして以下の三つがあるそうです。
①調査件数
調査官1人では1週間に1件がめやすとされる
②追徴課税・増差所得等の額
「納税者の誤った申告を正す」という目的を反映して、追徴課税・増差所得の多寡で職員が評価される傾向がある
③重加算税の対象となった件数
職員の「悪質な不正を見抜く力」を評価するため、重加算税の賦課件数が重んじられる
―相続税を対象とした税務調査もひんぱんに行われているとか
日本では1年間に約100万人が亡くなっています。その中で相続税を納付する対象となるのはおよそ4パーセント。つまり4万件程度です。
ところが国税庁が公表した平成23事務年度(平成23年7月~24年6月)のデータによると、相続税を対象とした税務調査の件数は1万3787件。実に3人に1人が調査を受けている計算になります。かなり驚きの数字ではないでしょうか。
そのうえ国税庁が修正するように求めた「非違件数」は1万1159件で81パーセントにのぼり、平均追徴課税額も約549万円となっています。この点は留意しておいたほうがいいと思います。
―そもそも税務調査で重視されていることはなんでしょうか?
職員の着眼点は「収入項目の計上漏れはないか」「支出項目の過大計上分はないか」の二つです。
収入をごまかすような経営者は論外ですが、実は支出項目については「正解」がありません。「白」「黒」「グレー」の領域があるのです。
ときどき「うちは税務調査で指摘されたことはほとんどありません」という税理士がいます。しかしそれは「グレー」の部分について交渉する力量がないだけ。税務調査は税理士の能力が試されるときでもあるのです。
―税務調査に対する経営者の心構えを教えていただけますか?
①税務調査に協力的であること
②益金の計上漏れは絶対にないようにしておくこと
③架空経費の計上は絶対にないようにしておくこと
この3カ条を守れば相手にイニシアチブを渡さずにすみます。
何度も言うようですが納税は立派な社会貢献であり、そのルールを知れば無用な心配をすることはありません。
それに加えて国税庁の事情も知っておくと経営者のストレスは軽減されるのではないでしょうか。いつも役に立つCDを提供してくださるレガシィさんに感謝です。(了)