ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

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認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第4回「ゆとり教育世代を知ろう!」

2013年7月 2日 22:30

彼らを非難することは簡単ですが、彼らの心情・考え方を理解すると納得できることもあるはずです。


■どうしてこうなった......「ゆとり教育世代」
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

みなさんも「ゆとり教育世代」という言葉がだいぶ耳になじんでいるのではないでしょうか。もはや当たり前になりすぎて、意識にすらのぼらなくなった方も多いと思います。

「ゆとり教育世代」と呼ばれる若者たちが社会で働き始めて数年経ち、彼らと一緒に仕事をする人たちも増えてきました。ところが「どうにも彼らのことが理解できない」という意見や不満も出てきているようです。

若者を非難することは簡単ですが、まずは彼らが受けてきた教育や考え方などを理解しておきましょう。そうすれば「ゆとり教育世代」への対応の仕方も明らかになるはずです。

―「ゆとり教育世代」は何歳ぐらいのことを指しているのでしょうか

1988~96年生まれ(現在の16~25歳)が該当します。特に17歳の子どもたちは小学校入学時からどっぷりとゆとり教育に浸かっています。

ゆとり教育の最大の特徴は、私たちが受けてきた従来のカリキュラムから授業時間が2割、授業内容が3割削減されたことです。実際に子どもを持つ親御さんたちからすると「こんなこともやらないの?」と驚きの連続だったでしょう。

そもそも「ゆとり教育世代」の少し前、1970年代生まれからは「大学全入時代」に突入しています。大学側も学生を集めることに必死になり、その結果なんと学生の6割が推薦もしくはOA入試(面接だけ)で入学するようになりました。きちんと試験を受けた学生は4割に過ぎません。少し前まで「平和ボケした現代社会では受験が唯一の困難だ」と言われていましたが、既にここまで堕落しているのです。

その一方、有名大学はレベルを下げていません。授業時間が減らされ、周囲が推薦やOA入試を利用しているなかでも真剣に受験に臨んでいる学生はまだいるのです。どうやら学生の向上心も2極分化しているといえそうです。

―ゆとり教育における「絶対評価」も彼らに大きな影響を与えているとか

「絶対評価」が登場する前、学生の成績は「相対評価」によって決定していました。通知表の1~5段階にはそれぞれ定員があり、極端に言えば自分がどれだけ頑張っても評価が1になることさえあります。悔しい思いをすることにはなりますが、常に人と自分の関係を考えたり社会の厳しさを知ったりすることができます。

その点「絶対評価」の世代は違います。周囲とは関係なく自分が頑張ったかどうかが重んじられ、通知表の算定でも努力すれば全員が5になることもあります。

ちなみに私も「ゆとり教育世代」の特徴を痛感したことがあります。ある新入社員の声に元気がなかったので「もう少し声を大きくしてください」と注意したところ、その社員は改めるどころか「私は頑張って声を出しています」と反論してきたのです。

この新入社員は「ゆとり教育世代」らしく、周囲の評価よりも自分の価値基準で動くのでした。それでいて「周囲の人が自分を評価してくれない」と不平を言うので、ほとほと困ってしまいました(笑)とはいえ「ゆとり教育世代」の特徴は明らかなのですから、

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①学校と違い、社会は「相対評価」であることを教える
②新人であっても良い点はそのつど評価する
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この二つに留意して接すればうまくいくと思います。「ゆとり教育世代」の扱い方に困っている経営者の方はぜひ知っておいてください。

■豊富な知識がなければ、創造性は生まれない
―ゆとり教育が導入されたきっかけの一つとして、学歴偏重に対する批判がありました。これについて長谷川先生はどうお考えですか?

経営者として考えると、その人に向上心があるのか、社会の厳しさを知っているかなどを出身大学から推し量ることも必要だと思います。ビジネスパートナーとなる優秀な人材を確保するためには、これまで以上に学歴を重視せざるを得ないのが正直なところです。

驚くべきことに「ゆとり教育」を主導した国ですら、その効果を検証できていません。それどころか「ゆとり教育は学力低下の根源」と批判されていることはみなさんもご承知の通りです。

そこで文部科学省は中央教育審議会に学習指導要領の見直しを要請し、2008年には内容を増加させた学習指導要領案が告示されることとなりました。これがいわゆる「脱ゆとり教育」です。

確かにこれからの時代は創造性が大事ですが、本当の創造性は知識の詰め込みなしには生まれないと思います。なぜなら勉強を通して先人の知恵や経験を知らなければ、ものごとの基準がわからないからです。

自分では斬新なアイデアだと思っても、ずいぶん昔に発表されていたということも多々あります。まずは若いうちにしっかり勉強しておくことが大事ではないでしょうか。

そして経営者をはじめ上の世代は全てゆとり教育のせいにするのではなく、彼らの感覚を理解したうえで対応することが大切です。(了)