ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第118回「間違った専門家に相談してはいけません」

2013年3月19日 22:30

専門家の本質を考えることがとても重要です。


■もう失敗しない! 保険会社を選ぶポイント
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

「間違った専門家に相談してはいけません」というテーマです。
私がおととし『介護にいくらかかるのか』(学研教育出版)を発売して以来、「医師がすすめる戦略的生命保険活用術」「専門医が教えるちょっと得するお金の話」と題して講演する機会が増えました。

そのおかげで多くの保険販売員と知り合いました。経営者の集まりで名刺交換するときも、必ずといっていいほど保険販売員の方がいます。ただし、私がみたところ保険販売員は医療や介護に関する知識がほとんどないようです。

―それが保険販売員の実態だとすると、驚きですね

そこで私は保険販売員になるためのカリキュラムを調べてみました。するとお客様の医療・介護状態をイメージさせる内容に乏しく、彼らに悪気はないものの適切な提案ができていないことがわかりました。

私は保険販売員に必要なのは「提案力」「比較販売」「組織力」の三つだと思います。

特に経営者に保険商品の提案をするのなら、決算書が読めることは大前提です。さらに税務、法務、労務の知識も必要。そうでなければ「提案力」があるとは言えません。

―顧客である私たちも、つい相手の言いなりになってしまいます

その通りです。一般的に高価な買い物をするときは相見積りをとって比較検討します。ところが保険加入となると、一つの保険会社で決めてしまう人が多い。これはすごく危険なことです。

例えば40歳の人が5000万円の定期保険に加入する場合、会社によって掛金が2.5倍も差がつくことも。私たちが生涯で最もお金をかけるのは住宅、次に保険といわれています。それなのに2.5倍も差がつくことを知らないままでいいのでしょうか。よって提示された条件で「比較販売」ができない保険販売員も論外です。

―「組織力」とはどういうことですか?

「提案力」があって「比較販売」ができる優秀な保険販売員でも、その人が個人事業主であれば十分とはいえません。なぜなら優秀な人ほどよく働くせいか、急に亡くなることがあるからです。その人に万が一のことがあったら、保険加入者はお手上げです。

必ずしも大企業である必要はないのですが、たとえ担当者が亡くなっても他の人が引き継げる「組織力」を持ったところを選びましょう。

経営者にとって保険の加入は重要な戦略の一つ。優秀な保険販売員と知り合いになれることも経営者に必要な資質だと思います。

■その人は相談するにふさわしい人ですか?
―保険に加入するときは、私たちの能力も問われるのですね

みなさんはファイナンシャルプランナーや保険販売員、証券会社、投資会社、銀行に勤めている人たちのことを「お金の専門家」だと思っていませんか? 実はそれが落とし穴です。なぜなら彼らは「お金の専門家」ではなく「お金のセールスマン」なのですから。

もっと正直に言うと「お金持ち相手に手数料を取る商売の専門家」です。しかも彼らはお金持ちよりお金を持っているわけではありません。そのような人たちが本当に「お金もうけ」の指導ができるでしょうか? 

確かに彼らは情報提供してくれます。しかしそれは私たちの恐怖心をあおって自分たちに有利な商品を売り、手数料を取るため。それゆえ情報に一貫性がなく、彼らの言葉をうのみにするといいようにやられてしまいます。くれぐれも信用しすぎないことです。

―相談する相手のことをよく吟味する必要がありそうです

同じく税理士に経営の相談をすることもおすすめしません。かくいう私もかつては相談していたのですが、それが間違っていると気付いたからこそ成長できたと思っています。

例えば私は180名ほどスタッフを抱えて経営していますが、ほとんどの税理士は個人事業主か数名スタッフがいる程度。大勢の人間を雇ったうえで経営したことがないのです。そもそも税理士の仕事は税金の計算であり、彼らに経営の相談をするのはお門違いです。

とはいえ私たち医師もあまりほめられたものではありません。医師でありながら喫煙し、運動の習慣がない人はかなりいます。当然ながら健康指導などできません。

これはお金もうけの指導ができないファイナンシャルプランナー、経営の相談ができない税理士と全く同じです。

医師は病気を見つけることはできても、健康の指導はできないのです。お断りしておきますが、私は例外ですのでご安心ください(笑)

いずれにせよ彼らを「健康の専門家」と過信しないこと。それよりは運動指導を行うトレーナー、東洋医学(針、灸、マッサージ、整体)、健康器具をうまく組み合わせたほうが有効です。

ただしその場合も自分の「感性」に従ってください。人にすすめられたからといって、自分が快適に感じられないものにお金や時間を浪費することはやめましょう。何事も「この人からアドバイスを受けるべきかどうか」を見極めてから行動に移すことが大事です。(了)