ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第113回「広がる格差!60歳以上の4分の1は金融資産ゼロ!!」

2013年2月12日 22:30

1500兆円に上る個人金融資産の6割を60歳以上の方が握っていますが、「豊かなシニア」は少数です。早いうちから貯金することが重要です。


■毎月20万円出せますか?
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

前回、2030年の「多死時代」においては有料老人ホーム、グループホームやサービス付き高齢者住宅で亡くなる方が急増するという話をしました。

とはいえ、そんなに簡単に移行できるのかという疑問もあります。なぜならこれらの施設はとてもお金がかかるからです。

―どれくらいのお金が必要なのですか?

地方にあるグループホームで月額15万円程度。有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅は月額20万円程度です。

地価が高いところにある施設なら、5~10万円余分にかかります。都市圏のグループホームなどは、月額20万円以上が一般的です。

ちなみにグループホームは、地価が高すぎるとビジネスが成立しません。例えば東京都世田谷区は、介護を必要とする人口に対して事業者数が極端に少ないです。

そのため都市圏の住民は、介護施設を利用するために周囲の市町村に出ていくことがよくあります。

―老後にはお金の問題がついて回りますね

このような現状をふまえ、昨年末の日本経済新聞の記事『広がる格差! 60歳以上の4分の1は金融資産ゼロ!!』をご紹介したいと思います。以下は記事の抜粋です。

1500兆円にのぼる個人金融資産の6割を60歳以上が握る。ただ、金融広報中央委員会の調査では60歳以上の4分の1は金融資産ゼロ。3千万円以上を保有する16パーセントが平均額を約1500万円に押し上げているが、『豊かなシニア』は少数派だ。

「金融資産がゼロ」とは、収入は年金のみで取り崩す貯金もない状態です。

さて、ここで国民年金について考えてみましょう。自営業の場合、国民年金を40年間(満額)かけると支給額は年間79万2100円です。もちろんこれから健康保険や介護保険料が引かれるので、手取りはさらに低くなります。つまり月額6万円程度になる計算です。

―夫婦合わせて12万円だと、かなり厳しい生活が予想されますね

そのうえ貯金がなければ、月額15万円以上かかる有料老人ホーム、グループホームやサービス付き高齢者住宅への入居は不可能です。

一方会社員なら年額200~300万円、月額は15~25万円になります。しかし奥さんが専業主婦だと、支給額は国民年金と同額。夫婦だと一人当たりの年金は目減りしてしまいます。

「お金の話ばかり......」と思うかもしれませんが、毎月20万円以上出せれば施設の選択肢が広がるだけでなく、介護にまつわる問題はほとんど解決できます。

子どもが毎月援助できればいいのですが、今の経済状況でそんな余裕がある人はどれだけいるでしょうか? 今から将来を見据えて月額20万円を維持する手立てを考えておく必要があります。

■早めの準備で差が付く!
―国は何らかの対策を打っているのでしょうか?

これまで国は助成金を出し、特別養護老人ホームや老人保健施設を整備してきました。年金支給額が少ない人は、負担金10万円以内で入居できる減免制度もあります。しかしこれらの施設数は非常に少なく、今後の増床も期待できません。入所まで2、3年待つこともざらで、そのまま自宅で寝たきりになってしまうケースもあります。

―豊かな老後のために用意しておくことはたくさんありそうです

感情的な話し合いや議論より、若いうちからお金を残すことが大事です。ただしお金を残しすぎたり年金が多かったりすると、他の家族や子どもがあてにしてしまうことも。

老後の資金が子どもの住宅ローン返済の一部に使われてしまう例もあります。そんなことにならないよう、子どもを教育しておく必要があるでしょう。

―何よりも具体的な数字を使って考えることが大事ですね

まずは自分がもらえる年金額をチェックしましょう。そして年額に定年後の年数をかけてトータルの支給額を出します。

【例:年額300万円支給される場合】
年額300万円×定年後20年=6千万円

また「老後の生活には8千万円かかる」といいますが、8千万円からトータルの支給額を差し引き、足りない分は自分でつくる・貯金すると考えてみてください。

【老後に向けた貯金の目安】
8千万円-6千万円=2千万円

これでだいぶ現実的な数字になるのではないでしょうか。みなさんにはぜひ早い段階から老後の準備をすることをおすすめします。(了)