ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第109回「長谷川家の本格的『家族会議』」

2013年1月15日 22:30

法人の運営と同じく、「家族会議」を使った本格的な家庭運営をお勧めします。


■家庭にこそ、本格的な会議が必要です
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

みなさんのご家庭でも、年末年始には久々に家族全員が集まったのではないでしょうか。そこで今回は「家族会議」についてお話ししたいと思います。

長谷川家では毎月家族会議を行っています。きっかけは毎年お正月に家族会議をするという知人の話でした。とてもいいアイデアだと思った私は、会議の頻度を毎月にして我が家に取り入れたのです。昨年第50回の家族会議を終了し、早くも5年目に突入しています。

我が家の家族構成は私と妻、21歳、16歳、11歳の3人娘です。家族会議を始めたとき、末娘はまだ6、7歳。よく文句も言わずに参加してくれたものだと思います。

―家族会議はどのように進めるのですか?

かなり本格的で、私がA4サイズ1枚の議事録をつくって臨みます。この議事録作成は組織運営にとても有効です。私はブレイングループの管理者会議の議事録と、経営者仲間と運営しているNPO法人の議事録もつくっています。

ちなみにNPO法人は年商2億円で借り入れなし、自己資本比率も80パーセントを越えました。現預金は1億円以上です。

―それほど議事録を重視するのはなぜですか?

会議は議事録に沿って進行します。議事録に取り上げられていないことは討議の対象になりません。議事録の質は会議の成果に直結し、そこで決定したことは組織の行く末を左右します。つまり議事録作成者には高い能力が必要なのです。

また人材育成の観点からも、議事録作成者を育てることは重要です。私も小さな会議の議事録を他の人に任せるなどして後任の育成を心がけています。

―家族会議ではどんなことを話し合うのですか?

会議の冒頭は家長である私が1カ月の間に読んだ本や講演で学んだことを話します。難しすぎたり説教じみたりすることなく、子どもたちにとって役立つ内容を厳選しています。

もちろん初めの頃は何を伝えようか迷いました。しかし毎月家族会議を行い常にアンテナを立てているせいか、かなり適切な話ができていると思います。我が家は娘ばかりなので、「くれぐれも悪い男にだまされないように」と話すこともよくあります(笑)

その後は子どもたちの勉強の進捗状況や成績について聞きます。そこではどんなに結果が悪くても、必ず良い部分を捜すようにしています。

―あえて良い部分だけを指摘するのはなぜですか?

苦手な分野を得意にするには大変な苦労を伴い、時間もかかります。それよりはすべてにおいて平均点を目指し、そのうえに得意な分野を上乗せすると考えたほうがテストの点数は伸びます。

そして漢字問題や計算問題など、勉強しておけば確実に点が取れる部分は落とさないこと。私自身が試験勉強を通して身に着けた数々のコツを子どもたちに伝えています。

■ポジティブな言葉で問題点を洗い出す
―その他にも家族で話し合っていることはありますか?

家族5人がそれぞれ 「上手くいっていること」を三つずつ発表します。これは大橋禅太郎さんの『すごい会議』(大和書房)を参考にしており、当グループの会議もすべてこの方法で行っています。

会議でそれぞれが問題点を発表すると、どうしてもネガティブな雰囲気になります。一方上手くいっていることを発表すると、とても前向きな気持ちになります。そもそも上手くいっていることと問題点は表裏一体なのです。

例えば長女が「風邪を引かず体調が良好である」と言えば、受験を控えて体調の維持を問題にしていることがわかります。

次女が「今月は部活を休むことなく参加できた」と言えば、次女の生活の中で部活が重要な位置を占めていることがわかります。

三女が「公文で表彰された」と言えば、彼女にとっては公文に毎日取り組むことが重要なのだとわかります。

そして妻が「毎日欠かさずお弁当をつくっている」「家族全員が健康である」と言えば、家族の健康を気遣っていることがわかります。

このように上手くいっていることを聞くと、各自の問題点も同時に洗い出されるのです。

―「上手くいっていること」が思いつかないときはどうしていますか?

どんなにささいなことでも構わないので、必ず三つ発表させます。「毎日元気に学校に通っている」だけでもいいのです。この考え方を身に着けておけば、「何もいいことがない」などと思い詰める必要はないとわかるはずです。

家族会議では私も包み隠さず仕事の話をします。新規事業を立ち上げること、医師としての活動以外に講演活動や執筆活動をしている理由も説明します。

会議の最後は我が家の資産状況や、借金があり全体ではマイナスであることを話します。こういうことは教えたくないと思う人も多いようですが、子どもも立派な家族の一員。はっきりと現状を示すことが大事です。

そして会議には気持ちを「快」にするスイーツが必須。外食することもあります。外食先で家族会議をしていると、お店の人にけげんな顔をされてしまいますが(笑)

―家族会議によって、よりオープンで深い関係を築くことができますね

これまで会議を継続できているのは、妻や子どもたちの協力あってのこと。経営者のみなさんにも家族会議をおすすめします。「家庭は社会の最小単位」と肝に銘じ、法人運営と同じく家庭運営にも真剣に取り組んでほしいと思います。(了)