「計画なくして自由なし」。年に一度、財産の洗い出しをしましょう。
■財産目録という名の家族アルバム
―2013年初の番組となる今回は、どんなお話をしていただけるのでしょうか?
みなさま改めてあけましておめでとうございます。最近、急激に番組ダウンロード数が増えており、昨年12月は総ダウンロード数が100万件を超えました。2010年12月に番組を始めましたので、ちょうど24カ月です。とても地味でニッチな番組ですが、ひとえにみなさまのおかげです。
さて、今回は年末の長谷川家の伝統行事「年末の財産目録作成」をご紹介します。私の父は毎年12月31日に我が家の財産を洗い出し、財産目録を作成していました。目録には貯金の額や株・不動産の時価評価、1年のうちにした大きな買い物などが記載されています。
父は結婚をきっかけに目録作成を始めたそうです。先ごろ両親は金婚式を迎えたので、かれこれ50年以上続けていることになります。
―目録からはどんなことがわかるのですか?
父はサラリーマンでしたので、莫大な財産をもっているわけではありません。結婚当初のページを見ると、財産と呼ぶにはあまりにもわずかな貯金があるだけです。長女(私の姉)にピアノを購入したときは、両親が子どものために必死にやり繰りしていた姿が目に浮かびます。
その後社宅を出て一軒家を購入したり、さらに一軒家を売って別の場所に買いなおしたりと日本経済が右肩上がりに成長していた時代を如実に表しています。両親は一生懸稼いだお金であこがれのピアノ、洗濯機、カラーテレビなどを購入し、本当に幸せだったのだと感じます。
―財産目録は家族の記録でもあるのですね
父親は結婚式に呼ばれると財産目録作成をすすめるそうです。幸せの絶頂にある新郎新婦が父のアドバイスを聞き入れるかどうかはわかりませんが(笑)もちろん息子の私はきちんと受け継いでいます。
―お父様と同じく、毎年財産目録を作成しているのですか?
私も20年前に結婚してから始めました。ただし今は毎年ではなく毎月エクセルで管理しています。サラリーマンであれば年に1回でいいかもしれませんが、経営者は毎月作成することが大事だと思います。
また経営者は法人の貸借対照表をふまえて個人の貸借対照表をつくったほうがいいと思います。なぜなら法人にたくさん借金があるにも関わらず、プライベートで派手な生活をしている経営者も少なくないからです。
自分が保証人になっているお金を含めたうえでプラスになるまでは、質素な生活を心がけるべきだと思います。
■依存する人は認知症になりやすい
―お金の管理は認知症予防にもなるとか
「お金の管理は自分でできていますか?」これは私が認知症の診察をするときに重視している質問です。その理由は自分で金銭管理ができなくなったときに認知症が判明することが多いからです。
また不思議なことに、健康なときから金銭管理をしていなかった人も認知症になる傾向が高いです。
男性であれば奥さん、女性であれば旦那さんに100パーセント依存していて、いくら貯金があるかも知らない。これは配偶者を信頼しているというより、社会人にあるまじき思考停止です。このような状態は認知症の危険因子になるので注意が必要です。
夫婦のどちらかがリーダーシップをとって管理することは問題ありませんが、お互いに最低限の関心を持ち、家計を把握しておきましょう。
―年末の財産目録作成は、夫婦のコミュニケーションにも役立ちそうです
私の母も、父がつくった目録には必ず目を通していました。理想的な関係だったと思います。そして年末の財産目録作成は、遺言作成にも役立つことをご存じですか?
遺言作成の第一歩は財産目録作成です。しかし一度も財産目録をつくったことがないと、この段階でお手上げになってしまいます。一方、年末の財産目録作成を習慣にしていればそれを提出するだけで済みます。
―面倒なことでも、コツコツ取り組むことが大事ですね
「計画なくして、自由なし」。これは林学(林業に関する学問)で財をなした本多静六氏の言葉です。この言葉は本多教授のすべてを物語っています。
25歳のときは年収250万円ほどだった本多教授でしたが、60歳のときには100億円もの資産を手にしていました。まさに地道な人生計画によってお金から自由になることを実現したのです。
その計画のもととなる年末の財産目録作成は、お金を増やすためだけのものではありません。自分が突然の事故や病気で亡くなった際、家族への責任を果たすために必要なものです。
まずは夫婦・家族の歩みの記録として年末の財産目録作成を実行することをおすすめします。ピンと来た方はぜひ始めてみてください。(了)