ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第107回「家庭の運営について」

2012年12月25日 22:30

幸せな結婚生活の送り方についてお話します。


お金は幸せな結婚生活の立役者
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

幸せな結婚生活の送り方・家庭の経営についてです。みなさんは幸せな結婚生活を送るためには何が大事だと思いますか? 愛情、思いやり、双方の我慢......いろいろ出てきそうです。しかし私は「お金」が夫婦間の問題の90パーセントを解決してくれると思っています。

かつて朝日新聞に「年収1500万円までは収入が増えれば増えるほど夫婦は幸せになるが、1500万円以上になると比例しなくなる」という記事がありました。幸せをどのように定義するかはさておき、かなり真実を突いているのではないでしょうか。

私の経験からも言えることですが、十分なお金があれば家事・育児で疲れている奥さんを外食や旅行に連れて行ったり、誕生日や結婚記念日にプレゼントしたりすることができます。配偶者が自分に内緒で買い物をしたときに目くじらを立てる必要もありません。そのため若いうちはとにかくお金を稼ぐことに主眼を置くべきだと思います。

ところが最近は「お金を稼ぐよりも大事なことがある」と言う人が増えているようです。いろいろな意見があると思いますが、資本主義社会で生きていく以上はお金を稼ぐことの大切さを知ってほしいと思います。

―お金は生活の潤滑油になるのですね

その通りです。そしてもう一つ重要なことは「あいさつ」です。結婚生活は本来とてもシンプルなもの。朝起きたら「おはよう」。食事のときは「いただきます」「ごちそうさま」。出かけるときは「行ってきます」。帰宅すれば「ただいま」。寝る前に「おやすみなさい」。これを毎日繰り返していくのです。

時には夫婦で喧嘩したり行き違いがあったりすることもあります。そんなときは不必要なことは喋らず、あいさつだけをしましょう。するとそのうちに仲直りできます。結婚生活はこのような日々の積み重ねです。

―結婚して数年経つと、「相手に直してほしい」と思うことも出てくるのでは

断言しますが、相手を変えることは無理です。「変えられるものは、未来と自分だけ」。相手が変わることを願うのではなく、自分から変わりましょう。

例えば家の片づけが苦手な配偶者に、文句を言うだけでは何も変わりません。一方、少しでも自分が片づけるようにすると、不思議と相手も片づけ始めるのです。

「自分は外で仕事をして疲れているのに......」などと思わないでください。私も結婚してからはトイレ掃除や自分の靴磨きなどをしています。家事を通して新たな発見もあり、意外と楽しめます。

配偶者が亡くなったあと、自分ひとりでは何もできないことに気付く男性がいます。喪失感を抱えて精神的につらいときに、生活まで成り立たないようでは悲惨です。特に若い男性は、今のうちから準備しておきましょう。認知症の予防にもなります。

家庭の中でも良きリーダーたれ
―「夫婦は一対の反射鏡」という言葉があるそうですが、どんな意味なのでしょうか?

以前私が体調を崩してつらいときに、妻が優しく接してくれなかったことがありました。そのときはずいぶん腹を立てたものですが、よく考えてみると自分も相手の体調が悪いときに優しく接していなかったのです。

配偶者に対して不満に思っていることは、自分が配偶者に対して行っていること。相手が優しくないのは自分が優しくないからです。もし相手に変わってほしいと思うのなら、自分が変わることが第一です。

ビジネスでは他人に責任転嫁しないリーダーがよいとされます。これは家庭でも変わりません。家庭内で起こるすべてのことはリーダーである自分の責任と考えるとうまくいきます。

「自分は会社の経営で大変なのに、家に帰ってからも面倒なことに関わるのはごめんだ!」などと思うようであれば、経営者失格です。

なぜなら世の中の最少単位である家庭さえもうまく運営できない人間が、それより大きな事業を運営できるはずがないからです。厳しいようですが、経営者であればそれぐらいの覚悟をもって家庭と事業に取り組むべきだと思います。(了)