日記とブログを継続していく方法をお話します。
本当は怖い脳と言葉の関係!?
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?
前回まで「個人の日記」や「世間に発信するブログ」を書くことは脳の活性化に役立つというお話をしてきました。今回はこれらを継続するコツをいくつかご紹介したいと思います。
どんなにいいことを思いついても、継続できなければ意味がありません。しかし「あなたはものごとを継続することが得意ですか?」と質問すると、たいていの人は「あまり得意ではありません」と答えます。まずはその答えから改めましょう。
なぜなら人間の脳は「継続することが苦手です」と口にするたび、その言葉を自分に刷り込んでしまうからです。だからこそ日頃から自分が使っている言葉を意識し、たとえ嘘でも「私は得意です」と答えること。いわば前向きな自己暗示をかけるのです。
もう一つは「苦手なことには手を出さない」です。例えば過去に運動の経験がない人が、突然「毎日ジョギングする」という目標を立てても実行できる可能性は低いでしょう。もともと文章を書くことが苦手な人がブログに挑戦し、途中で投げ出すケースもよくあります。
初めから苦手とわかっていることに手を出さなければ、不必要な失敗をしたり自己嫌悪に陥ったりすることもありません。得意なことから少しずつ自信をつけていけばいいのです。
―小さな成功体験を積み重ねることが大事なのですね
その通りです。また、始めてみて「これはダメだ」と思ったらすぐにやめる勇気を持つことも大事です。私は年間100冊ほど本を読みますが、実際にはその倍近く購入しています。
そしてある程度本を読み進めて「合わないな」と気付いたら、すぐに読むことをやめてしまいます。
―なぜそのような決断ができるのでしょうか?
私は素晴らしい本に出合うために読書するのであって、100冊読むことを目的にしているわけではありません。「100冊読んで10冊素晴らしい本があればいい」と割り切っているから、すぐ次に行けるのです。
たまに「値段が高かったから」などの理由でいつまでも本と格闘している人がいますが、時間の無駄遣いです。これは読書に限らず、何かを継続するときの考え方として重要なことだと思います。
コツは扁桃核をだますこと!?
―他にもものごとを継続するコツがあれば教えてください
脳の中にある扁桃核の働きを利用することもおすすめです。扁桃核は頭の奥深くにある1.5cm程度のハート形の器官で、瞬時に人間の「快」や「不快」を判断します。人間が原始的な生活をしていた頃は、この働きで脅威から逃げたり身を守ったりしていました。
さて、この扁桃核を常に「快」にする手法を身に着けると、ものごとを継続することができるようになります。
―具体的に教えていただけますか?
まず一つめは「困難の視点を変える」こと。何かを継続しているときに辛いと思ったら、視点を変えるのです。もしブログを書くことがつらいのなら、その先に出版があると考えて「不快」を「快」にしてみてはどうでしょうか。
出版するには、少なくとも8万字は書く必要があります。そう考えると800字程度のブログなど苦にならないと思えるようになります。
二つめは「自分だけではなく、誰かのために」です。例えば自分の気持ちや生きてきた証を子どもに文章で伝えようと思えば、力がわいてくるのではないでしょうか。すると今までの困難が吹き飛び、挫折しがちだった性格も変わることでしょう。
三つめは「仲間」です。経営者仲間と一緒にブログを書いたり、感想を述べ合ったりするととても励みになります。ただし仲間はよく選びましょう。言い訳やネガティブな発言が多い人とは付き合わないことも大事です。
このように考え方や友達づきあいを変えていくと、常に扁桃核が「快」の状態になります。それに伴って新しい出会いも生まれてくるはずです。
ところで松下幸之助さんは経営の3条件として、「経営者はまず社員にビジョンを示す。そして工程表を作成し、実行し続けるものだ」と述べていることをご存じですか?
これを脳の働きに当てはめると、ビジョンを示すのは右脳、工程を作成するのは左脳。そして実行し続けるのは扁桃核です。松下さんの言葉と脳の働きがぴったり一致していることに驚かされました。
これまで認知症は記憶を司る海馬の委縮が原因だと言われていましたが、最近は海馬より先に扁桃核が萎縮することがわかってきました。
つまり日頃から扁桃核で「快」を感じ、感情豊かな生活を送ることが認知症の予防につながるのです。みなさんにはぜひこの点を意識して日々を過ごしていただければと思います。(了)