ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

日経健康セミナー21「ストップ ザ ボケ!~がんばらない介護を実現するために~」2

2012年9月11日 22:30

日経健康セミナー21福岡講演の模様をお届け。今回は「認知症の種類と原因」についてです。


誰でも認知症になる可能性がある
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

認知症にはいろいろな種類がありますが、できるだけ簡単にお話しします。一つめはアルツハイマー型認知症。発症率は65歳で1パーセント未満、75歳で10パーセント、85歳で25パーセントです。頭を使わない生活によって、脳が廃用になることが原因です。

アルツハイマー型認知症患者は他の病気にかからないで高齢になった「生存のエリート」が多く、生活習慣病の合併も少ないのが特徴です。

―かつて「日本にはアルツハイマー型認知症は少ない」と言われていましたが

その通りです。しかし平均寿命が伸びるに従って増加し、現在は85歳を過ぎた人の4人に1人はアルツハイマー型認知症です。

実は「アルツハイマー」には2種類あることをご存じですか? 一つは先ほど述べたアルツハイマー型認知症、もう一つはアルツハイマー病です。

アルツハイマー病は初老期認知症といい、65歳未満で発症します。アルツハイマー型認知症と病理所見は同じですが、進行が非常に速いです。この病気をテーマにした『明日の記憶』(荻原浩著/光文社)という小説がありました。映画をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。私は主人公が住宅ローンをどうしたのか気になって仕方がありませんでした。

なぜなら私は50代でアルツハイマー病を発症した男性患者さんを身近に見たからです。この方は病気で仕事ができず住宅ローンを滞納し、家が競売にかけられました。その後自己破産したのち、生活保護を受けることになったのです。人をこれほど悲惨な状況に追い込む病気はアルツハイマー病ぐらいでしょう。私たち誰もがアルツハイマー病にかかる可能性があることを忘れてはいけないと思います。

―血管性認知症とはなんですか?

60~70歳代に脳血管障害(脳出血や脳梗塞など)の既往があり、アルツハイマー型認知症に比べ年齢が10歳ほど若いという特徴があります。

ところで「認知症=まだら痴呆」と思っている方も多いようですが、実際は異なります。「まだら痴呆」の状態を呈するのは血管性認知症だけ。しかも患者数は減少しています。アルツハイマー型認知症もそれほど「まだら痴呆」にはなりません。

さて、血管性認知症は高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の合併が多いです。さらに食べ物をうまく飲み込めなくなったり、むせたりするようになります。ついには肺炎を繰り返し、日常生活動作が落ちて歩行障害に至ります。認知症の症状よりこれらの問題に悩むご家族も少なくありません。

ちなみに100メートル歩行できなければ身体障害者3級と認定され、医療費が無料になります。

レビー小体病・ピック病も認知症
―レビー小体病について教えてください

これはパーキンソン病のような認知症です。アルツハイマー型は「元気でてくてく」歩くことができますが、レビー小体病は動きが鈍くなり、早い段階で幻覚を見るようになることが特徴です。例えば「お前はおれの奥さんのような顔をしているが、奥さんじゃないな」など、不思議なことを言ったりします。レビー小体病であるかどうかを確定するには今のところ解剖するしかありません。

余談ですが社会資源をうまく使いたいときは、診断名をパーキンソン病にして書類を作成したほうがいい場合もあります。

―最近はピック病も注目されているそうですね

ピック病は認知機能が維持できているにも関わらず、人格崩壊していることが特徴です。患者は反社会的行動をとるようになり、当然ながらご家族の負担は重いものになります。

反社会的行動とは、例えば近所の人が丹精込めて育てた花を全部引き抜いてしまったり、スーパーで「アンパンが食べたいな」と思ったらそのまま食べてしまったりするなどです。

もちろん捕まってもまったく悪びれず、ふてぶてしい態度をとります。もし近所によくトラブルを起こす人がいたら、ピック病の可能性があるかもしれません。ピック病はいまだに多くの医療機関で見逃されており、明確な診断基準の確立が待たれます。(了)