ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第90回「本の紹介『おやじダイエット部の奇跡』」

2012年8月28日 22:30

本より、糖質制限食で体重を落とすダイエットをご紹介します。


増え続ける糖尿病患者
―今回はどんな本を紹介していただけるのでしょうか?

桐山秀樹さんの『おやじダイエット部の奇跡』(マガジンハウス)です。本書は糖質制限食により、体重を落とす方法を説いています。ところで、3大栄養素とは何か知っていますか?

―たんぱく質、脂肪、炭水化物と記憶していますが......

その通りです。炭水化物は糖質ともいい、伝統的な日本人の食事は糖質5割、たんぱく質3割、脂肪が2割です。そして糖尿病は糖質の摂取過多によって発症すると言われています。

当院の外来でも脳梗塞や脳出血と同時に糖尿病を抱えている方が非常に多いです。このような状況を見ていると、日本は糖尿病によって潰されてしまうのではないかと心配してしまいます。ちなみにやせていても糖尿病になるので注意してください。

―糖尿病患者はどれくらいいるのでしょうか?

日本人の糖尿病人口は1千万人超。世界ランキングでは第6位です。2011年現在、世界の糖尿病人口は約3億6千600万人。実に成人(20~79歳)の約1割が糖尿病なのです。

―糖尿病予防はまさに急務ですね

当院はすでに糖尿病を患っている方に対し、夕食の糖質制限を指導しています。経営者仲間にもたびたび忠告してきました。もちろん私自身も例外ではありません。

きっかけは鳥越俊太郎さんとの講演でした。「講演の前に少し体重を落としておこうかな」という気軽な気持ちで、本書に紹介されている「スーパー(ご飯・パンなどの糖質を3食すべて抜く)」「スタンダード(2食のみ)」「プチ(夕食のみ)」のうち、「スーパー」を開始したのです。具体的なメニューは以下の通りです。

【朝食】ご飯、パンの代わりにサラダの量を増やし、卵やハム、チーズ、プレーンヨーグルトを食べる
【昼食】当院付属のデイサービスで出される食事からご飯を抜いたもの。その分おかずを増やす。少量ならおやつも可
【夕食】家族と同じメニュー。ただしご飯は豆腐、もやし、納豆に変える。肉と野菜が多め
【酒類】もともとアルコールは飲まない。どうしても飲みたい人は焼酎、ウイスキー、赤ワインを。ビール、日本酒は不可

意外と楽なダイエット
―糖質制限食を実践し、どのような感想を抱きましたか?

不思議なほど苦になりませんでした。しかし体重はどんどん減っていくのです。「スーパー」を1カ月続けたところ、マイナス5㎏という結果が出ました。

糖質制限食を始めた仲間も、「空腹を感じない」と口々に言っていました。普通は夕方になるとおやつをつまみたくなるものですが、それもありませんでした。おそらく血糖値が激しく上下しないからだと思います。

―糖質制限食に不安を感じる人もいるのでは?

糖質制限食は決して炭水化物をゼロにするわけではありません。あくまで糖質の摂取量を1日50~60g以内にするだけです。

昔のように朝から晩まで畑仕事をするなら糖質は必要です。しかし現代はオフィスワークや車での移動が中心となり、それほど身体を酷使しません。糖尿病の罹患率は車の普及とともに増えています。糖尿病の増加は、現代の生活スタイルに応じて食事を変えていないことが原因なのです。

今後は少なくとも1食は糖質制限する時代が来ると確信しています。医師の私たちがきちんと指導していかないと、糖尿病の合併症で苦しむ人が増えるばかりです。

『おやじダイエット部の奇跡』は、おどけたタイトルとはうらはらに非常に奥が深いです。みなさんもぜひ糖質制限食を実践してください。(了)