ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

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認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第89回「遺言で、遺族に感謝の言葉を残しましょう」

2012年8月21日 22:30

遺言で最も大事なことは、全ての遺産の分割を終えた後に記載する
『付言』です。


遺言で一番大切なこととは?
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

「遺言で、遺族に感謝の言葉を残しましょう」というテーマです。これまでは遺言作成を通して学べる経営上の知識についてお話ししてきましたが、ここで改めて「なぜ遺言を作るのか」について考えてみたいと思います。

経営者はたとえ自分の身に何があっても、従業員・取引先・お客様・家族が路頭に迷わないようにしておく責任があります。しかし遺言作成で最も大事なことは、遺産分割を終えたあとに記載する「付言(ふげん)」なのです。

―付言とは何ですか?

家族や大切な人へのメッセージとして、自分の考えや感謝の気持ちを明確に示すことです。遺言作成の機会でもなければ、家族に気持ちを伝えたり、手紙を書いたりする人はほとんどいないのではないでしょうか? 子どもも親から心のこもった手紙をもらったらうれしいはずです。

私も最初は経営者としての義務を果たすことに必死でしたが、最後に家族へ感謝の気持ちを書いたとき、本当に遺言を作成してよかったと感じました。

―遺言の真の目的は、感謝の気持ちを伝えることなのですね

信託銀行から聞いたところによると、一見不公平に思えるような分配でも、相続人全員が納得している事例はたくさんあるそうです。

相続は残された家族が財産のみならず親の遺志を引き継ぎ、お互いに支え合うこと。遺言作成はその機会をもたらすものと考えて実行することをおすすめします。


―遺言は人生計画の一部とも言えそうです

先日、鳥越俊太郎さんと一緒にシンポジウムを開きました。そのとき鳥越さんは「もはや子どもに老後を託す時代ではない。だからお金は自分が生きているうちに全部使い切りましょう」と述べられていました。

しかし、これはなかなか難しいことです。お金を使い切ってしまったあと、予想以上に長生きしてしまったら悲惨でしょう(笑)とはいえ、一生懸命作った多額の遺産をめぐって遺族が争うことも本意ではありません。

これらを避けるためにも、遺言は有効です。どれくらいの財産があるかを棚卸しておけば、自分のために使える額もわかります。「人間はいつ死ぬかわからない」と言いますが、ある程度計算しておかなければお金を使い切って死ぬこともできません。

遺言は遺族への付言が書けるということと、自分が自由に使えるお金の額がわかるというメリットがあります。

家族の絆を深めるための相続
―遺言作成の助けとなった本を紹介していただけますか?

遺言作成については主に信託銀行のお世話になりましたが、税理士法人レガシィ代表社員天野隆さんの著書『いま親が死んでも困らない相続の話』(ソフトバンククリエイティブ)も大変参考になりました。

以前お話ししたように、相続問題は親の遺産の額とは無関係に起こります。「自分には財産がないから、相続は関係ない」と言う人も多いのですが、天野さんによると家庭裁判所の調停の4分の3は、遺産が5000万円以下のケースだそうです。

独身時代や子どもが小さい頃は「相続なんて他人事だ」と思うかもしれませんが、子どもの教育費や住宅ローンなどを抱える世代になると、気持ちは変わってくるものです。

また、両親が亡くなったあとの二次相続まで踏まえた遺言作成を心がけることが非常に大事です。

私が一番共感したのは、付言に「私はなぜこのような遺産分割方法を選択したのか」という理由を書いておくという部分です。相続でもめている兄弟姉妹は、いわば「親の愛情の奪い合い」をしているのです。無益な争いを避けるためにも重要なことではないでしょうか。

天野さんは相続のテクニックより、親子・兄弟といった家族関係を重視しています。最後は「亡き人に納得してもらう。これこそが遺族に課せられた『相続』という宿題の答えです」と締めくくられていました。まさに相続の本質を学べる良書だと思います。(了)