ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第88回「遺言作成で経営を知る...生命保険について」

2012年8月14日 22:30

将来を見越して受取人を変更する
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

遺言作成における生命保険について解説したいと思います。通常は生命保険に加入してから遺言作成をしますが、究極的には遺言作成をしてから生命保険に入ったほうが無駄はありません。

遺言作成を通して自分や法人にどんなお金が足りないのかを知り、それらを生命保険で補う方法がベストだからです。私も遺言作成を通して自分が加入している生命保険を見直すことができ、いい形になったと満足しています。

さて、個人で加入した生命保険は受取人が配偶者になっているのが普通ではないでしょうか。サラリーマンであればそれで問題ないのですが、経営者は個人だけでなく法人受取の生命保険にも加入しており、受取総額も大きくなります。

配偶者がいる一次相続では、配偶者にたくさんのお金を残すことが一般的です。しかし配偶者が死亡した後の二次相続を考慮し、あらかじめ受取人を配偶者以外にしておくこともできるのです。

私も遺言作成の際、個人で入っている生命保険の受取人を配偶者から3人の子にすべて切り替えました。トータルで考えると、こうしたほうが適切だとわかったからです。

―生命保険の受取人変更手続きは大変ではありませんか?

いいえ、実際は非常に簡単です。保険の担当者に聞いたところ、受取人を配偶者から子に変更するケースは珍しくないそうです。

二次相続に備えるために受取人を変更することはとても効果的で、「保険は小さな遺言書」とも言われます。意外と知られていないのですが、受取人を変更して節税することも一つの手です。

そして経営者が法人でも保険に加入する目的は以下の通りです。

①相続・事業承継
②事業保障
③勇退退職金準備
④節税

―それぞれを説明していただけますか?

経営者が突然死亡した場合でも、会社にお金があれば円滑に後継者へ移転できます。そこで経営者は①相続・事業承継を見越して保険に入っておく必要があるのです。

②事業保障は、経営者が死亡した場合は死亡保険金で借入返済し、事業を安定させるためです。ただし「1億円の借入返済に1億円の生命保険では不足する」ことに注意してください。

個人なら1億円の生命保険で1億円の借金を完済できますが、法人が経費で経営者の保険に加入していると、死亡保険金は会社の雑収入と見なされ税金がかかります。

そこで1億5000万円から1億8000万円程度の生命保険に入っておけば、税金を払った後も借入返済に充てられるのです。

①と②に使用した後に生命保険金が残ったら、経営者の遺族に死亡退職金として支払うことができます。退職金は毎月の役員報酬でもらうよりも税制面で優遇されているので、ぜひ活用してください。

もちろん死亡ではなく引退する場合にも使えるので(③勇退退職金準備)、経営者であれば少なくとも①~③のために保険をうまく使うことが必要です。

―保険金は幅広く活用できることがよくわかりました

「社内留保」という言葉がありますが、生命保険は「社外留保」だと思います。経営者の死去や経営状況の変化に直面したときも、生命保険という「社外留保」があれば生き残れるはずです。

できる経営者は乗合代理店と組む
―保険会社はどこを選べばいいのでしょうか

まず「誰を通して保険に加入するか」が非常に大事です。端的に言って特定の保険会社の営業マン及びセールスレディーを通して保険に加入する経営者は論外です。

経営者は個人や法人を含めた複雑な保険を管理しなければならず、相当の知識が必要です。通常の営業マンが対応できることはまずありません。そういう人に会うだけでも時間の無駄と考えてください。

もう保険は1社ですべて加入する時代ではないのです。例えば自動車などの高額商品を購入するときは複数の販売店から見積もりを取ることが一般的です。ところが生命保険となると知人にすすめられるまま入ったり、同一の保険会社で何種類も加入したりすることもしばしば。トータルで見ると保険は住宅購入に次いでお金を支払うのに、ほとんどの人は見積もりすら取りません。

「40歳で死亡保険金5000万円の定期保険」を複数の会社で比較すると、掛金が最も高い保険会社と最も低い保険会社では2.5倍の差がつくこともあります。ちなみにテレビコマーシャルでよく見かける保険会社の掛金は高い傾向があります。

経営者は複数の保険会社から選択できる乗合代理店と組むべきです。もちろん「経営者の保険に強い乗合代理店」を選ぶことは言うまでもありません。

経営者に何かあったときの頼みの綱は代理店の担当者ですので、たとえ誰かが欠けてもカバーできるように組織化されている代理店であることも必須条件です。

幸い私はかなりレベルが高い代理店の担当者とおつきあいがありますので、非常に助かっています。彼らを紹介することもできるので、必要な方はご連絡ください。(了)