ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第84回「体調管理 自律神経のバランス編」

2012年7月17日 22:30

交感神経と副交感神経の2つの神経系からなる
自律神経についてお話します。



体全体を支配する自律神経
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

体調管理のまとめとして、自律神経のバランスについてお話ししたいと思います。さまざまな分類の仕方があるのですが、人間の神経は大きく三つに分けることができます。

①運動神経......脳からの運動指令を全身に伝え、電気刺激で筋肉を収縮させて手足などを動かす

②知覚神経......ものを見る・音を聞く・匂いを嗅ぐ・味わう・温度や痛みを感じる

③自律神経......意志とは無関係に血管・心臓などの働きを調節したり、食物を消化・排せつしたりする

自律神経は交感神経と副交感神経の二つからなり、双方が一つの臓器を支配します。交感神経と副交感神経の正反対の作用が拮抗して働くことで自律神経のバランスが取れるのです。

―交感神経の働きとはどんなものですか?

交感神経が興奮すると、人は「戦闘モード」になります。血管が収縮し、心臓がどきどきして心拍数が増加します。この結果血圧が上昇し、心臓への血液還流量も増えます。

このとき消化管や皮膚への血液量は減少します。戦闘状態では食べ物を消化する機能は後回しになるからです。風邪を引いて咳が出ていても緊張状態に置かれると収まるのは交感神経が興奮しているためです。

―副交感神経とはどんなものですか?

副交感神経が優位になると人は「安静モード」になります。血管がゆるみ、心拍数も減ります。さらに血圧が下がり、消化管や皮膚への血液量が増えます。このとき食事をするとゆっくり消化吸収されます。

―多忙な経営者には常に交感神経が高ぶっている人も多いのでは?

その通りです。仕事中は常に緊張状態に置かれるうえ、資金繰りや人間関係の問題など、気が休まることはありません。交感神経が過剰興奮していると以下のような症状が出てきます。

○常に冷たいものを欲して、アイスコーヒーや水をがぶ飲みする

○焼肉や冷たいビールを欲する。交感神経を落ち着かせる最も簡単な方法は食事をすること。食事中は消化管の動きが活発になるので副交感神経が優位になる

○おできや吹き出物ができてすぐ炎症を起こしてしまう。多忙な生活を送っている女性の肌が荒れることも交感神経の過剰興奮で説明できる。便秘も同様

○床に入ってもすぐに寝付けない。途中で目が覚めてしまう

ほとんどの病気は「自律神経のバランスの崩れ=交感神経の過剰興奮」で説明できると言われています。

深呼吸でバランスを整える
―自律神経の乱れには注意しなければいけませんね

交感神経の過剰興奮状態が継続すると、血管が細くなって脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす恐れがあります。私も身近に交感神経が過剰興奮している人がいると、注意するよう声をかけています。

また日本人の死因の多くはがん・心疾患・脳血管疾患の三つですが、それらすべてに関わっているのが交感神経の過剰興奮なのです。

―自律神経のバランスを整えるにはどうすればいいでしょうか

最も大事なことは呼吸です。空気を吸って、ゆっくり吐き出す。これを繰り返すだけで交感神経と副交感神経のバランスが取れます。非常に簡単ですが意識して行う人はまだまだ少ないです。

体にいいとされているヨガ、太極拳、座禅なども呼吸に主眼が置かれています。これらも時間をかけて呼吸することで健康を維持するという考え方です。

最近はマラソンがブームですが、自律神経のバランスを取るならランニングよりもゆっくりとしたウォーキングがおすすめです。

―その他にも効果的な方法はありますか?

私は40歳になった頃から毎週土曜日に針治療を受けるようになりました。針治療は副交感神経を優位にしてくれます。

約90分の治療時間中はぐっすり眠れます。治療の後半には内臓がゴロゴロと動き、活性化していることがわかるほど。その後帰宅して食事をとると、とても気持ちがいいです。

私も常に交感神経が過剰興奮している状態で生活せざるを得ませんが、針治療は週に一度の体の手入れと考えています。針治療に行く時間がなければ寝る前に深呼吸するだけでも構いません。ぜひみなさんも実行してみてください。(了)