介護事業では現場の職員も含め問題となる、
「腰痛=ぎっくり腰」についてお話します。
多くの人を悩ませるぎっくり腰
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?
前回は風邪のお話をしました。今回は介護の現場で働く職員をはじめよく問題になる「腰痛=ぎっくり腰」についてお話ししたいと思います。
ぎっくり腰になった経験はありますか? 運動する機会が減った現代では、若い人でもくしゃみをしたり、中腰のまま重い物を持ち上げたりしたときなどに突然腰に激痛が走り、数日間動けなくなってしまうことがあります。
ぎっくり腰は腰痛の総称で、別名「急性腰痛症」といいます。介護の最中など、腰の筋肉に負担がかかったときに起こります。ぎっくり腰には腰の関節が炎症を起こしたもの、肉離れのような状態になったものなどがあります。
―ぎっくり腰を治すにはどうすればいいでしょうか?
一般的には炎症を抑える消炎鎮痛薬を使ったり、冷湿布を貼ったりします。炎症が起きた急性期の腰痛は冷やし、2~3週間後の慢性期は温めます。治療法を勘違いしている人も多いようなので注意してください。
ところで湿布は冷湿布が基本で、とうがらし成分が入ったものを温湿布と呼んでいることをご存じですか? とうがらし成分で熱く感じることもありますが、実は湿布が直接患部を温めたり冷やしたりしているわけではないのです。
ここで言う「冷やす」は水や氷を、「温める」は温熱を使うことを指しています。そしてとうがらし成分が入った温湿布はかぶれやすいことを知っておいてください。
また動くと痛みが増大するため、安静にすることが大事です。痛みが強い場合は整形外科医や腰痛専門医などで局所麻酔薬を注射し、痛みを伝える神経の働きを止める「神経ブロック」治療を行います。ちなみにこの注射は大人でも悲鳴を上げるほどの痛さ(笑)ただその後の効果はてきめんです。
腰痛の急性期にマッサージや指圧をすることはやめてください。ぎっくり腰は一種の炎症なので、その部分をマッサージすると悪化してしまいます。同様に飲酒や入浴も控えてください。
―ぎっくり腰になりやすいタイプはありますか
運動不足や加齢による筋力低下はもちろん、同じ姿勢を長時間続けて体が硬くなったり血行が悪くなったりした人に多くみられます。
ぎっくり腰の予防には運動をして筋力をつけたり、ストレッチで体をほぐしたりすることが大切です。私は入浴後と起床時に股関節を中心とした柔軟体操(ストレッチ)を欠かさず行っています。
毎日のストレッチで腰痛を予防
―股関節のストレッチにはどんな効果があるのですか
①股関節は歩行動作の要。ストレッチで柔軟にしておくと転倒防止になります
②股関節の可動範囲が広がり、下半身を使う運動(ウォーキングやゴルフ)の準備運動に最適。けがの予防にもなります
③腰痛・ひざ痛の改善・予防
④股関節周辺のリンパ線や血管を刺激して、血流やリンパの流れをスムーズにする。下半身のむくみや冷えが改善される
⑤お尻の筋肉を使うのでシェイプアップになる。便秘解消の効果も
介護職員でぎっくり腰を繰り返す人は仕事中にコルセットを使うことをおすすめします。ただし整形外科で作る本格的なコルセットはがちがちに腰を固定してしまうので、内科で処方してもらえる簡単な腰部固定帯や市販の腰痛ベルトのほうがよいでしょう。
―なぜベルトに効果があるのですか?
ベルトを巻くと動く際に腹筋を使うようになり、それが腰部にかかる負担を分散させるのです。この状態であれば、介護をしても腰痛を予防できます。看護師や介護職員にベルト愛用者は多いです。
一方、普段の生活でははずしてください。なぜなら常にベルトやコルセットを装着していると、腰の筋力が落ちてしまうからです。あくまで腰に負担がかかる作業をするときに使うこと。この点を理解したうえで活用することをおすすめします。(了)