世界の常識を外れた3つの不均衡から、公務員の給与についてお話します。
経営改善の余地はまだまだある
―今回はどのようなお話をしていただけるのでしょうか?
「公務員の給与削減に期待」というテーマでお話しします。以前から日本には世界の常識から外れた三つの不均衡があると言われていました。
それは「①金利」「②不動産」「③賃金」です。中でも「③賃金」が高止まりしている原因は「電力・ガス会社」「銀行」「公務員」の給与水準が高いことだと指摘されています。
これらは経営上の問題が発生したとき、国の援助を受ける可能性がある職種です。例えば銀行が不良債権で問題になった際は、公的資金を注入して危機を脱しました。
いくつかの銀行は返済を終えていますが、一時的にせよ公的資金を注入されたことは忘れてはいけないと思います。
今年(2012年)5月にようやく大手銀行が法人税を納めることを表明しました。これまでは利益が出ても赤字で相殺するため、税金の支払いが免除されていたのです。
銀行は今こそ利益を出していますが、また何かあれば国が助けることになるでしょう。ならば銀行員の給与が高止まりしている状況は改めるべきだと思います。
―電力・ガス会社について解説していただけますか
競争相手がいない電力・ガス会社は昔から高収入が維持されてきました。しかし東日本大震災からもわかるように、銀行と同じく何かあったら国が援助しなければならない業種です。
従業員の給与削減はもちろん、納入業者の選定・見積もり等を含めた固定費削減に取り組むべきだと思います。
―公務員の給与水準はどうなっているのでしょうか?
公務員の平均年収はおよそ700万円、退職金は2500万~3000万円と言われています。 これはサラリーマンの年収の中央値352万円とずいぶんかけ離れています。国家公務員と地方公務員を合わせると職員数は341万人、年間人件費は33兆円に及びます。
―長谷川さんはなぜ公務員の給与削減に期待しているのですか?
消費税を1パーセント増やすと2兆円の税収があるといいます。消費税を5パーセントから10パーセントに引き上げても、10兆円増える程度です。
それよりは国家および地方公務員の給与を民主党のマニフェスト通り20パーセント削減し、年間人件費を5、6兆円カットしてはどうでしょうか。
公務員の新規採用を抑制する案もありますが、それでは若者が希望を持てません。まずは現在の公務員全体の給与を削るほうが有効な手立てだと思います。
ただちにフェアな環境づくりを
―公的病院の給与水準についても疑問を呈していらっしゃるそうですね
実は公的病院の医師や看護師の給与水準は民間に比べてずいぶん高いのです。公務員である彼らの給与は「給与表」に基づいており、基本給はもちろん賞与、退職金も毎年上がっていきます。
一方民間は医療保険・介護保険の報酬自体が減っているため、昇給は非常に困難です。当グループでも給与面で折り合いがつかず、公的病院に異動していくスタッフはいます。
当グループが適正な労働分配率と経費削減で利益を出しているにも関わらず、赤字続きの公的病院が高い給与を払えていることは釈然としません。
ぜひ公的病院の給与水準を民間レベルに据え置き、フェアな環境づくりをしてほしいところです。
―介護事業にはもう一つ問題点があるそうですが......
社会福祉協議会(以下社協)による民業圧迫です。社協は民間の社会福祉活動を推進することを目的とした非営利組織で、1951(昭和26)年に制定された社会福祉事業法(現在の社会福祉法)に基づいて設置されました。
介護保険制度が施行される前は社協が重要な役割を果たしていましたが、今や民間企業と競合する存在です。
実際には赤字だったりサービスの質が低かったりする社協も少なくないのですが、市や国から補助金が出るため運営できているのです。
―この件については、早急な改革が求められますね
利用者も「社協なら仕方がない」と、サービスに不満があっても我慢していることが多いと聞きます。
もし公務員給与の20パーセント削減が実現すれば、医療・介護いずれも公正な競争ができるはずです。
これはサービスの向上を促し、利用者に恩恵をもたらすことでしょう。私たちが「おかしい」と感じていることはいずれ是正されると期待しています。(了)