ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第65回「専門家(会計事務所)を使いこなす」

2012年3月 6日 20:30

会計事務所から毎月10日までに月次報告書をもらいましょう。



まずは月次決算書を提出させよう
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

「会計事務所へ何を依頼したらいいのか」についてです。前回、粗利率・労働分配率・経営安全率の三つを毎月見るとお話しましたが、そのためには会計事務所から月次決算書をもらうことが大前提です。

―決算書は年に1回つくるというイメージがあるのですが......

私の周りでも「会計事務所から月次決算書なんてもらっていませんよ」と言う経営者は多く、そのたびに耳を疑ってしまいます。厳しいようですが、それでは甘いと言わざるを得ません。

もし会計事務所が何もしないのなら、こちらから要請すべきです。そして毎月10日前後には提出してもらってください。

―なぜ毎月10日前後なのでしょうか?

介護事業はケアマネージャーが作成する予定表に沿って運営されるため、その月の売り上げは前月にほぼ確定します。

そこで毎月10日前後に会計事務所から報告があれば翌月の対応策が打てますが、月末にずれ込むと改善は2カ月先になってしまうのです。

―10日前後に会計事務所から月次決算書をもらうにはどうすればいいでしょうか?

当然ながら法人は毎月末に売り上げを確定し、すぐに会計事務所へ報告できる仕組みを構築することが必要です。

また現金出納帳や預金出納帳の入力まで会計事務所に依頼しているところもあるようですが、これでは月次決算書作成が遅れるばかりです。日々の経費・領収書関係は自社で会計ソフトに入力するようにしましょう。

―自社で会計ソフトを使うことのメリットとはどんなことでしょうか?

帳簿類を自分で入力していると、この項目が決算書のどこに反映されるのかがよくわかります。経営者も人任せにせず、一度原点に戻って勘定科目の入力を行うことをおすすめします。

ちなみに私も開業して間もない頃はすべて自分で入力していました。父が銀行員だったこともあり、経営者自らが会計の知識を身に着けることの大切さはよく理解しているつもりです。

日頃から問題点を把握しておこう
―長谷川さんは会計事務所を選ぶことも大切だと考えているそうですね

もし会計事務所に対して常々不満を抱いているのなら、思い切って変更することも選択肢の一つです。

今後は人口減少に伴い、法人数も少なくなることは明らか。それにも関わらず決算書を年に1回つくるだけの顧問契約しかしない会計事務所は生き残れないでしょう。

新時代に対応できるだけの強みを持たない会計事務所と付き合っていると、こちらの運気まで下がってしまいます。自分のビジネスをさらに向上させたいのであれば、きっぱりと関係を絶つ勇気も必要です。

―会計事務所と上手に付き合うコツを教えてください

それは「顧問料を惜しまないこと」です。専門家に支払うお金を惜しんではいけません。

たとえ顧問料が高くても、それに見合うだけの働きをしてもらえるのであれば十分元は取れます。むしろ専門家を使いこなせない経営者に問題があるのです。

―どうすれば専門家を使いこなすことができるでしょうか?

かつて私も会計事務所を変えたことがあります。しかしこの決断に要した時間はわずか15分でした。

なぜなら日頃から現在の会計事務所に対する不満や問題点を整理・把握していたため、新しい会計士に出会ったときに「この人だ」とすぐわかったからです。

「会計事務所を変えるべきかどうか迷っている」と、数年もの間悩み続けている人も見受けられますが、経営者は時間を浪費してはいけないと思います。

決断が早いということは、常に問題点を把握しているということ。そうでなければ自分に必要な解決策を提供してくれる専門家を見抜くことはできません。

そしてお金を払ったらその10倍は使いこなしましょう。これも経営者に不可欠な能力です。(了)