ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第64回「会計の話(損益計算書)」

2012年2月28日 20:30

前月や昨年同時期との比較を毎月把握すれば、十分に数字は理解できます。



あなたは決算書が読めますか?
―今回はどんなお話をしていただけるのでしょうか?

この番組ではMPA(マーケティング・プロダクション・アカウンティング)のバランスをとることが大事だとお伝えしてきました。それを前提としたうえで、今回はアカウンティング=会計についてお話ししたいと思います。言葉で表現するには難しい部分もありますが、繰り返し聞いたりメモをとったりしていただければと思います。

―会計に必要不可欠なのが決算書ですね

その通りです。決算書には損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書があります。中でも損益計算書はお小遣い帳に近く、一番親しみやすいかもしれません。

そもそも介護事業の会計は

・売り上げ
・粗利益 
・人件費
・その他経費
・営業利益

これら五つの言葉で説明できます。

―介護事業の売り上げはどのような構成になっているのでしょうか?

介護保険の売り上げ、1割の負担金、その他実費の合計からなります。この売り上げから変動費を引いたものが粗利益です。

―変動費とは何ですか?

売り上げに伴って増加する経費のことです。例えばラーメン店の場合、ラーメンの売り上げが上がるほど麺の費用が増えるといった具合です。

介護事業は変動費が少ないのですが、デイサービスや入所系サービスで提供する食材費、福祉用具貸与事業では大手から福祉用具を借りる際のリース料が相当します。訪問看護や訪問介護は変動費がほぼゼロ。そのため売り上げ=変動費になります。
デイサービスでも変動費は10パーセント前後です。

ちなみに粗利益を売り上げで割った粗利率が90~100パーセントになるのが介護事業の特色です。

「粗利益」で割るのがポイント
―人件費・その他経費について教えてください

人件費やその他経費は変動費に対して固定費と呼ばれます。損益計算書には経費の項目がずらりと並んでおり、苦手意識を持つ経営者も少なくありません。しかし膨大な科目も人件費とその他経費の二つに分類するとわかりやすくなります。

そして人件費を粗利益で割ると労働分配率が出ます。介護事業の中でも変動費が少ない訪問系サービスは労働分配率60パーセントでもある程度利益が出ますが、保険の改定などを考慮して50パーセント以下を目指すとよいでしょう。

―営業利益はどのように考えればよいでしょうか?

粗利益から人件費とその他経費を引いたものが営業利益です。営業外の利益や損益を加えると経常利益になりますが、介護事業は営業利益=経常利益としてもほとんど問題ありません。

さらに経常利益を粗利益で割ったものを経営安全率といいます。人件費や経常利益を売り上げで割る計算方法もありますが、粗利益で割るのがポイントです。そうすれば経営状況の実態に近づいてきます。

―経営安全率は何パーセントを目安にするとよいでしょうか?

15パーセントを目標にすることをおすすめします。しかし、かなり無駄をそぎおとさなければこの数字を達成することは難しいでしょう。

わかりやすく説明すると、経営安全率は「この分だけ売り上げが減ると利益がなくなる」という指標です。つまり経営安全率が15パーセントだとすると、売り上げが15パーセント下がったときに利益がゼロになるということです。

経営安全率を10パーセント以下に設定してしまうと、介護報酬の改定などがあればすぐに利益がなくなってしまうので注意してください。

―損益計算書を活用するポイントをまとめていただけますか?

まずは損益計算書から売り上げ・粗利益・人件費・その他経費・営業利益の五つを抜き出し、そこから粗利率、労働分配率、経営安全率を見てください。

そして前月や昨年と比較することが重要です。私は四つの法人を持っていますが、粗利率、労働分配率、経営安全率の三つを見て、不審な点がないかチェックしています。経営者が数字を読むことができなければ、どれだけ売り上げを伸ばしても安定した経営はできません。

そして意外と盲点なのは、自分の口癖です。経営者たるもの安易に「私は決算書を見ることが苦手で......」などと口にしてはいけません。脳は人が口に出すことを本当だと思い込む働きがあるからです。ですからどんなに苦手でもとにかく勉強し続けること。そのうちに会計の神様が理解できるように導いてくれます。(了)