ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第56回「質問コーナーから/会議の方法」

2012年1月 3日 20:30

ポイントは、問題となっていることでなく、上手くいっていることを発表することです。




「うまくいっていること」を見つけよう
―長谷川さんはよく会議のあり方や方法についてアドバイスを求められるそうですね

会社独自の手法に沿って進めていても、あまり効果が見られず試行錯誤している人は多いと思います。そこで今回は、会議の進め方や種類について解説しましょう。

―ブレイングループではどのような会議が行われているのですか?

当グループでは、訪問看護、訪問リハビリ、ケアマネージャー、デイサービス、クリニックといった各部門の長が月に一度集まる「管理者会議」と、各部門で行われる「部門会議」があります。

―会議ではどのようなことをテーマにしているのですか?

「管理者会議」および「部門会議」では、必ず最初に「自分たちの部門でうまくいっていること」を三つ発表します。

一般的に会議はお互いの問題点や欠点を発見したり、批判したりする場と考えられていますが、それでは非常にネガティブになってしまいます。

一方、「うまくいっていること」を発表すれば参加者の意識が前向きになり、会議も成功へと導かれるのです。

―なぜ、「うまくいっていること」を発表すると会議が成功するのでしょうか?

実は「うまくいっていること」と「問題点」は表裏一体なのです。

例えば当グループのある部門からは「産休に入った社員の仕事を全員で分担することができた」と発表がありました。もちろん現実的には常勤で働いていた社員が欠ければ仕事が滞ることは明らかです。

しかし、ただ「負担が増えて大変でした」と発表するのではなく、「全員で仕事を分担することができた」と捉えることによって、この部門には社員が産休に入った場合の対処方法がなかったことがわかるのです。

また「管理者が家庭の事情で一時不在になったが、なんとか業務を遂行できた」という発表からは、その部門には管理者がいなくても仕事が回る仕組みが必要だったということがわかります。

つまり「うまくいっていること」に着目すると、問題点も一緒に洗い出されるのです。

―「うまくいっていること」を発見するには、普段の考え方を変える必要がありますね

確かに初めの頃は「うちにはうまくいっていることなんてありません」と言う部門もありました。しかし他の部門の責任者が「うまくいっていること」を発表する姿を見ているうちに考え方が変わってきます。

「うまくいっていること」は会議の場で急に考えても出てきません。そのため責任者は普段の行動や目の付けどころを変え、発見したことはすぐメモするなどして会議に臨むようになります。

―このような会議を行ううえで、参考にしたものはありますか?

『すごい会議 短期間で会社が劇的に変わる!』(大橋禅太郎著/大和書房)を参考にしました。

この本には他にもいろいろな方法が書かれているのですが、私は「うまくいっていることを話す」方法だけを取り入れました。みなさんも本に書かれていることをすべてうのみにするのではなく、現時点で簡単に導入できることに絞って採用してみてはいかがでしょうか。

縦割り構造の弱点をフォローする委員会
―その他にも、長谷川さんが会議で工夫していることはありますか?

当グループには組織を横断する委員会が存在します。委員会は縦割りの管理者会議では対処しにくい事柄を扱います。

―「管理者会議では対処しにくい事柄」とはどういうものですか?

グループ全体の教育方針を考える教育委員会をはじめ、雇用委員会、営業委員会などです。

営業会議を営業部単独で行っているところは多いと思いますが、すべての部門が参加することも非常に有効です。

いずれの委員会も組織を横断して人を集めることが大事であり、その人たちが協力することで効果を発揮します。

―委員会を組織することに慣れていない場合はどうすればいいでしょうか?

本格的に委員会を発足する前に、まずは忘年会などをプロジェクトチームで運営することをおすすめします。

基本的にプロジェクトチームは目的が達成された時点で解散しますが、今後も継続する必要があると判断した場合は委員会に格上げします。

―委員会が縦割り構造の弱点をフォローしてくれるのですね

委員会は組織の問題へ柔軟に対応できる非常に優れた仕組みです。また、委員会には「有能な人材に新たな活躍の場を与える」というメリットもあります。

―具体的にはどのようなことでしょうか?

例えば各部門長の下で働いているナンバー2、ナンバー3の人材を委員会のメンバーに抜擢します。すると彼らは委員会でリーダーとして仕事をすることができます。

新しい組織で今までとは違う働き方が学べますし、いずれは各部門のリーダーになることも視野に入ってくるでしょう。組織が抱える問題への対応と人材育成の二つを可能にする委員会は、まさに一石二鳥だと思います。(了)