ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。
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インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第9回「認知症介護」

2011年2月 8日 20:30
事業主がこれだけは知っておきたい認知症の知識をお伝えします。

認知症には段階がある

―今回は介護事業所の経営者が「認知症」の知識を持つことの必要性ついてお話しいただけますでしょうか


「認知症」という言葉を耳にしたとき、みなさんはどんなイメージを抱くでしょうか。もの忘れが多くなる、同じ質問を繰り返す、大声をあげて暴れるなど、実にさまざまだと思います。専門的に言うと「認知症」には二つの段階があります。介護事業所の経営者はその段階に応じて「自分たちはどんなサービスを提供するのか」を考える必要があります。


―「認知症」の二つの段階について教えていただけますか


「認知症」の初期段階を「中核症状」、さらに進行した段階を「周辺症状」と呼びます。「中核症状」が出現すると、ものを覚え、その記憶を保持して再生するという記憶のメカニズムが障害されます。


すると同じ話を繰り返したり、何度も同じ質問をしたりするようになります。とはいえ家族や周囲の人たちは聞き流すことができるので、この段階ではそれほど対応に困ることはありません。介護サービスを提供する現場スタッフも同様です。 


介護事業所の経営者が抱いている「認知症」のイメージもだいたいこのようなものではないでしょうか。しかしそれはあくまでも「認知症」の初期段階だということを知っておいてほしいのです。


―年齢を重ねると同じこと言ったり聞いたりするようになりますが、それも「認知症」の初期段階と考えるべきでしょうか


もし不安があるのなら専門医にかかることをおすすめしますが、周囲の人が聞き流せる程度であればそれほど問題はないと思います。ただ、2~3時間のあいだに同じ話を何度もするようであれば「認知症」が進行している可能性があります。


判断の前提となる知識

―「周辺症状」とはどんなものでしょうか?


「中核症状」が進行して「周辺症状」になると、幻覚・妄想・暴力行為・徘徊などの症状が出ます。


しかしながら、これらが「認知症」の症状だとすぐにわからないことがあります。家族も「なんだか最近、おじいちゃんが怒りっぽくなったね」などと話すのですが、もともとの性格だと思ってしまうのです。そしてしばらくたってから検査し、ようやく「認知症」が進行した「周辺症状」であると知るのです。


ほかには誰も来ていないのに「さっき○○さんが来た」などと言う幻覚症状や、「お金をとられた」などと騒ぎ出す被害妄想の症状もあります。


このような症状が出てくると家族や現場スタッフも対応に困るようになります。そこで経営者が「この方は重度の認知症患者である」と理解しているかどうかが重要になるのです。


―それはなぜでしょうか?


「自社の介護サービスは重度の認知症患者に対応できるのか?」という問題が浮上するからです。これを機に自分たちがサービスを提供する対象者像を考え直すのか、あるいは「どんな患者であれ、できるかぎりの対応する」と決めるのか。これは現場スタッフではなく、経営者が判断すべきことです。サービス利用者に誠意を持って対応することはもちろんですが、現場スタッフの現状も考慮しなくてはいけません。経営者として重要な決断を迫られることになるでしょう。


しかしどんな判断をするにせよ、「認知症」に段階があることを理解しておく必要があります。そのため経営者も必要最低限の「認知症」の知識を身につけておくことが大切なのです。(了)