ライフドクター長谷川嘉哉の転ばぬ先の知恵(旧:介護事業の知的創造コンサルティング)

ビジネス、勉強、マネープラン、介護、ライフワークバランス……
認知症専門医であり、経営者でもある長谷川嘉哉が人生を10倍豊かにする知恵をお届けします。

インタビュアー/ポッドキャストプロデューサー:早川洋平(キクタス) 制作協力/和金HAJIME

第3回「介護事業がコンサルティングを受ける必要性②」

2010年12月28日 20:30
介護事業は、他の事業に比べ小規模な事業所が多い点も特徴です。適正なコンサルティングフィーの範囲でのコンサルティングが必要です。

適正な数値を見極めよう!

―介護事業者がコンサルティング導入をためらうのはなぜでしょうか?


「コンサルティングは高い」という先入観が大きな障壁になっているので、まずはその思い込みをなくしてほしいと思います。そして介護事業所を運営するにあたって無理のない範囲の価格を提示するコンサルティング会社があったら、一度依頼してみることをおすすめします。


―コンサルティング導入の際に注意すべきことはありますか?


自分たちが目標とする「売上額」を設定し、それを達成するためにコンサルティングを受けるのだと自覚することです。事業所のなかには具体的な数値目標すら決めていないところもあるようですが、事業所の規模や人員などから達成したい売上額を算出することが先決です。それに応じてコンサルタントに支払える額もわかってくると思います。


―コンサルタントに依頼する前に、具体的な数値目標を設定するのですね


経営者が的確な判断を下せるようになることはもちろん、現場のスタッフが数値目標を知っていると、「自分がどれくらいの利益を上げれば事業所に貢献できるのか」が理解できます。つまりそれぞれの仕事における「適正な基準」が把握できるようになるのです。


―経営面では、特にどんな数字に注目するといいのでしょうか


私は現在4法人を経営していますが、事業がうまくいっているかどうかを判断するために「目標売上」「労働分配率」「経営安全率」を目安にしています。


ちなみに「労働分配率」は粗利益のうちどれだけをスタッフの給与にしたかであり、「経営安全率」は営業利益が粗利益の何パーセントかで算出します。私は「目標売上」「労働分配率」「経営安全率」の三つが適正な範囲に収まっていれば経営は順調であると考えています。


数字を共有することの効果

―具体的な数字は、経営方針を明確にしてくれる効果があるようです


基準や目標を数字で把握できると、不安から解き放たれるのです。それに事業所で働くすべての人たちが数字を共有すると利益が上がることが多いですし、現場にもいい緊張感が生まれます。ということは、あまり利益が上がらず、現場にも緊張感がない事業所は具体的な数値を共有することで改善される可能性があると言えます。


―数字には難解な部分もありますが、スタッフの間で混乱はありませんでしたか?


私の事業所ではスタッフ全員が「目標売上」「労働分配率」「経営安全率」を理解しています。もちろん経営にはもっと複雑な指標がありますが、この三つぐらいならそれほど難しい話ではありませんので、安心していただきたいと思います。


―コンサルタントとうまく付き合うポイントがあれば教えてください


コンサルタントに過剰な期待をしないことです。たとえどんなに丁寧なコンサルティングを受けても、現場が動かなければ現状は変わりません。「うちのコンサルタントは月1回の面談のほかには何もしてくれない」と不満を言う経営者もいますが、それは本末転倒です。自分たちでコンサルタントから与えられた「課題」を達成しようと努力することが大事なのだと理解してほしいと思います。


介護現場は日々の業務に流されがちですが、コンサルタントから与えられた課題を1カ月に1つこなしていくだけでも、1年後はかなりのレベルに達することができると思います。コンサルタントにすべてをゆだねるのではなく、上手に活用してみてはどうでしょうか。(了)